研究課題/領域番号 |
23658086
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
菅原 康剛 埼玉大学, 理工学研究科, 名誉教授 (70114212)
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研究分担者 |
栗山 昭 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00318156)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 植物 / 培養細胞 / 保存 / ガラス化 / バイオテクノロジー |
研究概要 |
現在、植物培養細胞の長期保存法として液体窒素を用いた超低温保存法が多く用いられている。しかし、申請者らはコケ等の培養細胞において、常温における細胞のガラス化による新たな方法を見出した。この方法は超低温保存法に比べ数多くの利点があり、本研究では、この方法の高等植物の培養細胞への利用拡大を目指し、主にイネ培養細胞、4種の柑橘類培養細胞を用い、常温での細胞ガラス化のための種々の条件について検討した。なお、常温で細胞をガラス化させるためには、細胞を生きた状態で乾燥・脱水させ、含水量を充分に低下させる必要がある。したがって、保存細胞は、前培養等により乾燥耐性を高める必要がある。本研究では、まず、培養細胞を高い生存率で常温においてガラス化させるために、前培養条件、乾燥・再吸水の条件、乾燥耐性の増大に伴う細胞の変化等について検討した。また、既に常温での乾燥保存が可能になっているコケ培養細胞との比較も行った。その結果、イネ培養細胞では、コケ培養細胞とは異なり、乾燥耐性を高めるために高い濃度の糖を含む培地で前培養をする必要があり、さらに細胞の乾燥速度等も調整する必要があることが明らかになった。一方、柑橘類培養細胞では、いずれの細胞も高い濃度の糖を含む培地で前培養をすることにより乾燥耐性が著しく増大することが明らかになった。細胞を常温でガラス化させるために必要な含水量が0.1 gH2O/gDW以下まで低下しても80%以上が生存すること、また、乾燥処理直前の前培養時に高温(30-40℃)で1時間培養することにより乾燥後の細胞の生存率が増大し、再培養における細胞の増殖も促進されることも見出された。この高温培養による乾燥耐性の更なる増大は、通常の培養条件では見られずに高濃度の糖を含む前培養条件で見られることから、乾燥耐性の増大機構に密接に関連しながら発現していることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究計画」に挙げた、1)前培養条件の検討、2)乾燥条件の検討、3)吸水・回復過程の検討、の個々の検討項目についておおむね順調に研究が進んでいる。4)前培養過程での細胞の変化の解析については現在進行中であり、結果が出次第平成24年度の研究へとつなげて行く。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究では、当初予測していた研究結果の他に、前培養過程における高温培養による細胞のさらなる耐性増大の結果を新たに得た。今後、この高温培養の効果の一般性について、他の植物の培養細胞について早急に検討する。特に、この高温培養による、熱ショックタンパク質(HSPs)の出現とその細胞ガラス形成への効果について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究では、研究費の大半は消耗品購入のために使用予定である。
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