研究課題
本研究はメゾスケール複合体群によるクロマチン構造調節機構を証明することをを目的とし、複合体群の探索・機能解析を目指すものである。 平成23年度は、主に既に研究代表者が見いだしていた新規メゾスケール複合体MERUの形成のメカニズム、およびそのクロマチン構造調節における作用機序に焦点を当て、研究を行った。具体的にはMERUの複合体構成タンパク質群を同定した結果から、既知ヒストン修飾酵素複合体およびクロマチンリモデリング因子複合体を含む事が明らかとなり、これら既知複合体が会合しメゾスケール複合体を形成する機構を調べた。まず、Protein Kinase C (PKC) を活性化するホルボールエステル (TPA) を用いて細胞を処理するとMERUの形成量が一過的に増加する事から、PKCを介してリン酸化を受けて複合体群の会合を促進させるbridging factorの存在が示唆された。次に、TPA処理未処理、およびPKC阻害剤処理後の細胞抽出液から、リン酸化タンパク質を精製し、PKC依存的にリン酸化を受けるMERU構成因子を探索した結果、CG1737という機能未知タンパク質を同定した。さらにCG1737をノックダウンすることによりTPA刺激依存的なMERU形成量の増加が見られなくなった事から、CG1737はMERUの形成に必須な因子であることが分かった。 またCG1737のノックダウンによりTPA刺激によって発現上昇するショウジョウバエc-Junホモログ(Jra) の発現変動、およびc-JunプロモーターへのMERU構成因子のリクルートメント、c-Jun遺伝子近傍の活性化クロマチン構造の形成も認められなくなった事から、CG1737およびPKCによるリン酸化を介したメゾスケール複合体MERUの形成がPKC刺激下流でのc-Jun遺伝子発現において重要な機能を担っている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
交付申請書に記載した平成23年度の研究計画2項目のうち、2点目の新規メゾスケール複合体形成候補因子のスクリーニングについては、全く着手できておらず、若干の遅れが出ている。その理由として、1点目の研究計画である申請時に新たに同定したメゾスケール複合体MERUの機能解析に、注力してしまった事があげられる。
平成24年度は23年度に得られた結果をまとめるとともに、未だ着手できていないもう一つの新規メゾスケール複合体構成因子CG1828の複合体解析、機能解析に注力する。 本研究は2年間の計画であるので、平成23年度内に着手できなかった新規因子のスクリーニングは、残りの研究期間が一年間であることを考えると、因子群の探索のみで終わってしまい機能解析にまで着手できない可能性が高いため、研究計画の優先度としては下げる必要があると考えている。
研究経費の主となる消耗品は実験試薬、ガラス器具、ショウジョウバエ系統の購入および系統維持のためのバイアル・飼料等の購入費に該当する。その他、タンパク質複合体精製 (細胞の大量培養に使用する血清・培地類、複合体精製に用いるカラム類等) や、質量分析計に供するサンプル調整に要する酵素やプレート類を申請する。また免疫染色に使用する各種抗体類を購入する。 一方、本研究課題遂行上必要な備品類、具体的には質量分析装置、遺伝子改変ショウジョウバエ飼育施設、蛍光免疫染色のための顕微鏡類等の設備はすべて現有設備でまかなえる。 消耗品以外の経費としては、研究成果発表のための旅費・論文投稿のための経費、英文校閲謝金、抗体作成外注費に充当される。
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Molecular Cell
巻: 45 ページ: 494-504