研究課題/領域番号 |
23658088
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片岡 宏誌 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (60202008)
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キーワード | 膜タンパク質 / ミトコンドリア / ペルオキシソーム / 脂肪細胞 |
研究概要 |
膜タンパク質であるPGDR(Prothoracic gland derived receptor/GHITM (Growth Hormone-inducible trans-membrane protein)は脂肪細胞(昆虫の場合は脂肪体と呼ばれる)で高発現していることから動物種を越えたエネルギー代謝を調節する基本分子である可能性が高いと考え、エネルギー代謝に如何に関与するかについて解析を行っている。 研究当初、マウスGHITMがペルオキシソームと思われる細胞内小器官に局在化するという予備的な結果を得ていたが、N末側、C末端側のペプチドに対するrabbit抗体を作製し、免疫染色を行ったところ、ペルオキシソームよりもむしろ、ミトコンドリアに局在することを発見した。さらに、生細胞におけるGHITMの局在をC末端にGFPを融合したGHITMを用いて調べたところ、免疫染色と同様に、GHITMのシグナルがミトコンドリアに観察された。また、GHITMを過剰発現させたHeLa細胞では、ミトコンドリアトラッカーで染色されず、ミトコンドリの恒常性が破綻していることが示唆された。 24年度は、GHITMが種を超えて、ミトコンドリアの形態の維持に関与するのかを明らかにするため、カイコPGDR/GHITMの抗体を作製するとともに、クローニングを行い細胞内局在の観察を試みた。カイコPGDR/GHITM-GFPを発現させた細胞は観察されず、PGDR/GHITMが過剰に発現することによって細胞が死滅するという、マウスGHITMと同様の結果を得た。 GHITMの脂質代謝に関わる機能についての解析については、腎臓において野生型と比較してGHITM遺伝子欠損マウスに顕著な脂質の蓄積が認められるという予備的データを昨年度報告したが、再測定の結果、再現性に問題があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
GHITM遺伝子欠損マウスの繁殖が思うように進まず、実験に必要な数に達しなかったため、遺伝子欠損マウスの肝臓および腎臓における発現遺伝子の違いや、GHITM遺伝子欠損マウスの腎臓における脂質の蓄積の再解析、およびLC-MS/MSを用いたノックアウトマウスに蓄積する脂質の同定等が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は今年度からの実験を継続するとともに、下記の計画に沿って以下の実験を進める。 1. PGDR/GHITMの有無によって変化する細胞内の脂質の同定。 2. PGDR/GHITMを介した遺伝子発現調節機構および脂肪細胞分化制御機構の解析、 3.ミトコンドリアにおけるPGDR/GHITMの機能解析 特に、当初注目していた脂肪組織以外にも、今年度の研究から脂質の蓄積が認められた腎臓にも注目し、ノックアウトマウスと野生型マウスのトランスクリプトーム解析を新たに実施し、GHITMの下流で働く脂質の蓄積に関与する遺伝子の探索を行う。また、GHITMのミトコンドリア局在と脂肪組織や腎臓での発現遺伝子との関連についても解析を進める。これによりPGDR/GHITMを介した遺伝子発現調節機構の解明を目指す。 昆虫のPGDRについては抗体作りを進めているが、未だ特異性の高い抗体を得るに至っていない。また、HeLa細胞にPGDRを過剰に発現させると死滅することがわかっているので、発現量をコントロールする系をつくり、昆虫においてもミトコンドリアにPGDRが局在するか否かを明らかにする。また、機能解析ついても計画に沿って実験を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.遺伝子欠損マウスの戻し交雑ならびに実験に必要な遺伝子欠損マウスの飼育に必要な消耗品 2.培養細胞および生体組織を用いた実験に必要な遺伝子・生化学関連試薬の消耗品 3.研究を円滑に進めるための研究調査旅費および研究成果発表のための学会出張旅費 4.研究成果発表のための論文添削・投稿費
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