研究課題/領域番号 |
23658089
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
人見 清隆 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (00202276)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 酵素 / 蛋白質架橋 |
研究概要 |
本研究では、タンパク質架橋化酵素、トランスグルタミナーゼの有するユニークな接着反応様式、すなわち、タンパク質基質の特定のグルタミン残基と一級アミンとの間に、共有結合レベルでの架橋形成を触媒する、という反応を用いて、有用タンパク質の新規な固相化の開発を目指している。この際、研究代表者がこれまで得てきた、アイソザイム(高等動物では8種存在)に特異的な高反応なグルタミン提供反応基質を活用するものである。 本年度は、これらのペプチド配列をアイソザイム毎に接着ペプチドとして有効利用するために、(1)新規なアイソザイム(TGase 6, TGase 7)の高反応性基質配列を得て解析をし、また(2)これらの配列を有用酵素であるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)に融合させたタンパク質を多種類発現・精製した。さらには(3)、給源として必要なトランスグルタミナーゼを十分量活用するために、組換えタンパク質を大腸菌を宿主として発現することも試みた。特に(3)についてはこれまで不可能とされていたヒトTG2について成功して、本実験に十分な量を得るめどが立っている。 昨年度予定していた、一本鎖抗体への高反応性基質配列の融合タンパク質との発現は行えなかった。(2)のGSTとの融合タンパク質を、固相化のために一級アミンを固定化した材質(プラスチック以外の固相)に反応させるという事にまでは至らなかった。これまでアッセイ系確立において行ったことのある、96穴プレートにスペルミン(一級アミン) 等の固定化について、その条件を改良した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高反応性基質配列を、機能を有するタンパク質に遺伝子工学的に融合させて発現・精製するのが1年目の目標であった。上の研究概要に記したように、新規な2種について、高反応性基質配列を新たに得ることができた。固相化(の条件検討)のために、大量のトランスグルタミナーゼが必要であることも判明したので、購入で無く得られるよう組換え酵素の発現精製も行った。TGase 2, TGase 4について大腸菌発現系で成功し、その他のいくつかは昆虫細胞系で得ている。魚類(メダカ)のトランスグルタミナーゼについても成功しており、十分な組換え型トランスグルタミナーゼ標品を得ることができた。また、アイソザイムの反応特異性を利用して、複数の酵素を活用して、異種の蛋白質を同じ固相に調節的に接着させることも計画している。この際、アイソザイムとこれまで得てきた高反応性基質配列とアイソザイム間の反応性が、不向きな組み合わせであるかどうかが問題になるが、この点を明らかにした。1年目に新たに得たアイソザイムの高反応性基質数種について、機能性タンパク質の一例として、有用酵素であるGST(グルタチオンーS―トランスフェラーゼ)との融合タンパク質の作製を行った。これらのタンパク質は、一級アミン固定化を行う段階であり、数種類の高反応性基質に関して精製を完了している。 その他の、高反応性基質配列と機能性タンパク質の融合タンパク質の作製については、当初の予定では一本鎖抗体との融合を試みる予定であったが、それについてはまだ完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画では、高反応性基質配列を機能性タンパク質に融合させ、一級アミンを固相化した素材への、接着酵素反応を活用しての固相化を試みるものである。これまでアイソザイムに関しての特異性をほぼ検討し終え、また組換えタンパク質についても特定のアイソザイム(TGase 2, TGase 4)によっては、大量の産物を供給できる状況になった。今年度は、GST融合タンパク質に加えて、前年度遂行できなかった一本鎖抗体への基質ペプチド数種の融合タンパク質を作製する予定である。またのその他、GFPなど、種々の蛍光タンパク質についても高反応性基質配列との融合タンパク質を作製する。 一方で、一級アミンの反応性・固相化についても検討する。一級アミンの反応性は従来、グルタミン側基質に比して特異性が低いことが言われていたが、代表者および他情報からは、ある程度の選択性があることがわかった。そのため、アミンの固相化実験に先行して、まず最もグルタミン提供基質と反応しやすい、一級アミンを特定する。その後、プラスチック、および硝子ビーズを対象に一級アミンの付加を試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に、組換えタンパク質としてのトランスグルタミナーゼを大量に得て今後も固相化実験に使用するために、継続的に発現精製・保存をする必要性があることと、新規アイソザイムについての基質ペプチドーGST融合タンパク質を多種類得たために、これらを保存しておくための超低温フリーザーを納入予定である。また、基質配列と融合させて発現する細胞増殖因子などがうまく発現すれば、これも保存する。この他の機器としては、秤量計を更新する。 消耗品として、次の物品を予定している。まず、基質ペプチド数種類を新たに合成委託するほか、一級アミンを固定化するためのプラスチック、ビーズなども購入予定である。酵素を発現して得るための大腸菌培養用培地、酵素反応や精製に必要な試薬類を含めて、いくつか解析用の器具を更新の予定である。 このほか、本研究計画は最終年度であるので、成果を公表するための学会参加発表、論文作成のための使用を予定している。
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