研究課題
体温を一定に保つ「恒温性」は哺乳動物や鳥類、そして一部の高等植物にみられる特徴であり、ミトコンドリアを介した機構により発熱が誘導されていると考えられている。しかしながら、脱共役タンパク質UCPやシアン耐性呼吸酵素AOXによる発熱分子モデルはピーター・ミッチェルの化学浸透圧説をベースとした理論モデルであり、実験的な証明には至っていない。そこで申請者らは、ケミカルバイオロジーやオミクス解析などのアプローチを用いて、植物における発熱分子機構の理解を目指すこととした。まず、発熱植物ザゼンソウを用いて、トランスクリプトーム解析により発熱時期特異的に発現している遺伝子を探索した。その結果、発熱時期においてはミトコンドリアタンパク質をコードしている遺伝子の発現が上昇していることが明らかになった。一方、発熱が終了した時期においてはプロテアーゼ遺伝子が高発現していることも明らかになった。以上のように、発熱時期特異的に発現しているタンパク質群には特徴があり、これらが発熱装置の実体を構成している可能性が示唆された。さらに、同定した候補遺伝子の遺伝子構造を明らかにするため、ザゼンソウの発熱組織から得られたmRNAを用いてEST解析を行った。得られたデータを解析した結果、発熱部位で発現する多数の遺伝子の構造を明らかにすることができた。今後はケミカルプローブとこれらの遺伝子との相互作用を調査する予定である。また、発熱の消失と関係が深いと考えられるシステインプロテアーゼ遺伝子(SrCPA)の全長をクローニングし、その発現解析を行った。その結果、SrCPA遺伝子は発熱の終了する時期に高発現していることが明らかになった。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 10 ページ: 1990-1992
10.1271/bbb.120434