研究概要 |
Bacillus属細菌由来尿酸酸化酵素(bUOD)のフレキシブルループを改変したW279L+P287G変異体は、50℃以上での高い熱安定性と20℃以下での高い酵素活性を示した。そこで、本好冷化変異体についてその分子機構を解析した。 bUOD W279L+P287G好冷化変異体のX線結晶構造解析を実施し、2.1オングストローム分解能で結晶構造を決定した。インターフェースループII(His277-Pro300)以外の主鎖構造や、本ループ中のアミノ酸残基の溶媒接触面積には有意な変化が認められなかった。しかし、ループ中の284番目から289番目のアミノ酸残基の電子密度は消失しており、ループの可動性が増したことが示唆された。実際、インターフェースループII全体で温度因子が野性型酵素と比べて増大しており、酵素活性の上昇に関与することが示唆された。また高温での活性の低下には4量体サブユニットの部分的な解離が関与することが示唆された。 次に、枯草菌由来の耐熱性酵素としてα-アミラーゼを用いて、蛋白質の表面近傍に存在するフレキシブルループ中のヒンジ領域に相当する残基を選抜して改変酵素を作製し、その好冷化について検証した。bUODの解析結果に基づき、フレキシブルループのヒンジ残基を二次構造と溶媒接触面積に基づいて予測し、枯草菌由来の耐熱性αアミラーゼの変異標的として7アミノ酸残基を選抜した。各残基についてsaturation 変異導入を行い、可溶性デンプン分解活性を指標に選抜したところ、5残基(W134, Y145, Y189, R216, K260)の変異体酵素で120%-300%となる室温での比活性上昇を示した。また、いずれの変異体も50℃から60℃の変性温度を示し、熱安定性を維持していた。活性上昇の原因を明らかにするため、各変異体酵素を大量精製しX線結晶構造解析を進めている。
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