研究概要 |
Streptomyces thermoautotrophicusは,一酸化炭素を唯一の炭素源として好気的に生育する放線菌である。この菌は,窒素源が枯渇した場合には大気中の窒素を固定することが可能である。すなわち,酸素共存下においても,活性を維持したニトロゲナーゼ系をもつという点で非常にユニークな放線菌である。本研究の目的は,この酸素耐性のニトロゲナーゼを用いて水素ガス発生のバイオリアクターモデルを構築することである。そのためには,活性をもつニトロゲナーゼを大量に取得することが肝要であり,つまりは菌の大量培養系の確立が求められる。ドイツ・バイロイト大学では,一酸化炭素を用いて大量に培養する系が実働している。しかし,一酸化炭素の人体に対する危険性は極めて大きい。そこでわれわれは,この菌が一酸化炭素の代わりに水素/二酸化炭素を用いても培養可能であることを利用することにした。実験室レベルの10Lファーメンターを用いて,水素/二酸化炭素系を用いた大量培養系の確立を目指した。大型の水素ボンベによる長時間のガス供給は危険を伴うことことから,この研究費にて購入したガスクロ用水素ガス発生装置を水素源として,炭酸ガスボンベおよび空気コンプレッサーにて通気培養することを試みている。これまでに,培地中に窒素源であるアンモニウムイオンが共存する場合には,倍加時間約6時間で大量培養することが可能となった。現在,窒素源飢餓状態での培養条件を検討している段階である。窒素源の培地中での含有差異によって,生じるニトロゲナーゼの発現量の違いについても定量中である。
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