研究概要 |
本研究において、棘皮動物イトマキヒトデの胞胚化を阻害する海綿由来グリコシドAncorinoside A(1)の作用に類似する化学物質を12,000種のケミカルライブラリーからスクリーニングした。しかし、選択的に胞胚形成を阻害する化合物は見出されなかった。そのため、海綿 Ancorina sp. から調製された標品 (1) を用いて桑実胚への作用を調べたところ、1.0 μg/mlの濃度で (1) は割球にアポトーシスをもたらした。 つぎに、 棘皮動物バフンウニとイトマキヒトデの原腸形成・間充織細胞形成を阻害する海綿由来セスキテルペン Exiguamide (2) の活性をミミックする化学物質をケミカルライブラリーから探索したが、見出すことはできなかった。また、(2) と同様のウニ胚の骨片形成阻害が報告されている Stearylformamide(3)と、イトマキヒトデ胚の原腸形成を阻害することが報告されている (R)-(+)-1-(1-Naphthyl)ethylisocyanide(4)について、それぞれウニ胚とヒトデ胚発生における阻害効果を再検討した。その結果、100 μg/ml の(3)はハスノハカシパン胚の発生にまったく影響を与えなかった。また、100 μg/ml の(4)で処理したイトマキヒトデ胚では割球の崩壊がもたらされた。これらの結果は、E. Ohta et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 72, 1744-1771 (2008) に記載された結果と異なり、(3)と(4)は(2)の活性類縁体ではないことが結論づけられた。そこで、微生物代謝産物を広く調査し、放線菌 Strepptomyces sp. が生産するTrichostatin A (5) がウニ、ヒトデの間充織細胞形成を選択的に阻害することが明らかになった。
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