研究課題
1. イトマキヒトデ胚の胞胚化を選択的に阻害する海綿成分Ancorinoside A (1) の活性類縁化合物を探索した。しかし、胞胚形成阻害活性を有する化合物を見出すことはできなかった。選択的に胞胚形成を阻害する化合物としてあらたに、海綿 Petrosia solida Hoshino 1981から新規 C30 ポリアセチレン化合物 Petroacetylene (2) を見出した。 (2) は3.1 μg/ml以上の濃度でイトマキヒトデの胞胚化を阻害するが、ヒト培養細胞の増殖はこの濃度で阻害されなかった。 (2) に含まれる4個のアセチレンはそれぞれケトンと共役するが、これらを還元して得られたテトラオールは非特異的毒性を示し、0.8 μg/mlの低濃度でヒトデ胚細胞の溶解をもたらした。2. イトマキヒトデ胚とバフンウニ胚の原腸形成を阻害するExiguamide (3) の活性類縁体を探索した。しかし、細胞分裂に影響を与えないで原腸形成を選択的に阻害する化合物を得ることはできなかった。そこで、化学合成で得られた (3) の標品を用いて原腸形成阻害効果を検討した。50 μg/mlの濃度で (3) は原腸の正常な伸張を阻害した。 (3) は発生初期から細胞間の接着が強まり、これによって胚の形態異常がもたらされると判断された。3. イトマキヒトデ胚はビピンナリア幼生期を経てブラキオラリア幼生へと発生する。イトマキヒトデの細胞核には本種属特異的な核型トランスグルタミナーゼ (4) が存在する。(4) の生成をモルフォリノアンチセンスオリゴ注入によって阻止すると、受精卵はビピンナリア期までは正常に発生するが、正常なブラキオラリア幼生は生じなかった。個体発生では発生後期になってめざましく組織構造が変化し、種属固有の形態を作り上げるが、それには (4) のような種属固有の生体分子が関与すると考えられる。
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Natural Product Research
巻: 27 ページ: 1842-1847
10.1080/14786419.2012.763128