研究課題/領域番号 |
23658103
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮澤 陽夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20157639)
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研究分担者 |
仲川 清隆 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80361145)
木村 ふみ子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50321980)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プラズマローゲン / 認知症 / LC-MS/MS / 動物実験 / 細胞実験 |
研究概要 |
1)Neuro-2A細胞のPlsによるアポトーシス抑制分子機構の解明 マウスの脳由来神経芽細胞腫であるNeuro-2Aを低栄養状態や、酸素ストレス条件で培養し、再現性のよいアポトーシス誘発モデル系を検討し、無血清培地による低栄養条件がよいアポトーシスモデルであるとの結果を得た。2)4000QTRAP LC-MS/MSによるPls分子種の生体組織と食品の分析法開発 ラット脳、赤血球、血清、そして食品中のPls分子種(18:0p/oleoyl(18:1) PE、18:0p/arachidonyl(20:4) PE、18:0p/docosahexaenoyl(22:6) PE)の測定条件を決定し、食品における分布を明らかにした。その結果、ホヤにDHA含有Plsが豊富に含まれていることを明らかにしたので、平成24年度はホヤからプラズマローゲンを抽出し、アルツハイマーモデル動物試験に供する予定である。3)Pls分子種によるアミロイドβ(Aβ)の凝集阻害および分解作用の相違の検証 脳におけるアミロイドβ(Aβ)の蓄積は神経細胞死を誘発する(Nature,1987:325:733-736)。そこで各種のPls分子種によるAβ分解促進作用とAβ凝集抑制作用の効果をin vitro試験で検証し、Plsに凝集阻害作用があることを確認した。4)Aβ脳室注入アルツハイマーモデルラットへの活性型DHA-Pls給与による学習・記憶・行動への影響についての評価研究 PaxinosとWatsonのブレインマップに従い、ラットの脳室にアミロイドβを浸透圧ポンプで連続的に注入し(J.Neurochem.,2008:107, 1634-1646)、アルツハイマーモデルラットの作成の予備検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はプラズマローゲン(Pls)の脳神経細胞死抑制作用の分子機構について、細胞実験、機器分析、動物実験を用いて解明することを目的としている。 平成23年度は細胞実験によるPlsのアポトーシス抑制作用の証明、LC-MS/MSによるPls分子種の生体組織と食品の分析法の開発およびDHA含有Plsのスクリーニング、in vitro試験によるPlsのアミロイドβの凝集阻害および分解の証明を行うとともに、アルツハイマーモデルラットの作成に着手した。 このうち細胞実験によるPlsのアポトーシス抑制作用の証明では、無血清培地による低栄養条件による培養をアポトーシスモデルとして確立し、プラズマローゲンの添加試験を今後進めていく予定である。LC-MS/MSによるPls分子種の生体組織と食品の分析法の開発およびDHA含有Plsのスクリーニングでは、Pls分子種分析条件を行い、生体組織、細胞、食品の分析を行った。その結果、ホヤにが高含量含まれていることを示し、アルツハイマーモデル動物試験への投与試験のための試料の調製を現在進めている。in vitro試験によるPlsのアミロイドβの凝集阻害および分解の証明ではPlsに凝集阻害作用があることを確認した。さらにアルツハイマーモデル作成の予備試験を行い、プラズマローゲンの投与試験の準備がととのいつつある。 以上より、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果より、PlsのNeuro-2Aのアポトーシス抑制作用および、in vitro試験によるPlsのアミロイドβの凝集阻害および分解作用を明らかになり、本研究の目的であるPlsの脳神経細胞死の抑制分子機構が明らかになりつつある。一方、食品からのPL摂取が脳認知機能に与える影響を評価については、ホヤのPlsがDHAを高含量含んでおり、脳のPlsに近い構成脂肪酸をもつことが明らかになった。 そこで、本年度は昨年度の研究で作成されたアルツハイマーモデルラットを用い、食品由来DHA含有Plsのラットへの経口投与実験を行いアルツハイマーモデルラットでの空間認知力抑制に対するPlsの改善作用について検証する。 さらにラットへのPls経口投与試験を行い、血漿と赤血球膜のDHA含有Pls濃度を非投与ラットと比較し、経口摂取したPlsの体内動態を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主な使途は物品費であり、ラット血漿および赤血球膜のによるPls分子種分析に使用するための、標準品、抽出溶媒、チップやバイアル等の消耗品、LC-MS/MSの保守管理に必要な物品、さらに動物試験に必要なラット、飼料、手術道具、麻酔等の消耗品の購入に用いる。 また、研究成果発表のための旅費と論文投稿料を計画している。
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