研究課題/領域番号 |
23658105
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白川 仁 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40206280)
|
研究分担者 |
後藤 知子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00342783)
|
キーワード | 脂肪酸合成酵素 / 遺伝子発現調節 / 転写因子 / RNA安定性 |
研究概要 |
脂肪酸合成酵素(fatty acid synthase, 以下FASNと略)は、NADPH依存的に、acetyl-CoAとmalonyl-CoAから長鎖脂肪酸を合成する酵素である。食餌などの環境因子やホルモンがFAS遺伝子の発現や酵素活性に影響を与える。転写においてはステロール制御配列結合因 子(SREBP1c)とグルコース応答配列結合タンパク質(ChREBP)が鍵因子であり、それぞれ、インスリン、グルコースによって活性化される。申請者らは、通常ラットにおいて摂食-再給餌後の肝臓FASN mRNA量を経時的に観察したところ、血糖値やインスリン値が僅かに上昇した時間において、FAS mRNA量はピークを迎え、血糖値、インスリン値やFAS以外のインスリン応答性遺伝子の発現がピークのときには、FAS mRNA量は減少に転じていることを発見した。このことは、従来知られている機構とは異なった、FASNの転写制御機構の存在を示唆している。本研究では、再給餌直後の、血中インスリン、グルコースに依存しないFASN遺伝子の新規転写調節機構を動物個体を用いて明らかにすることを目的とした。摂食後の消化管から刺激が脳を介して肝臓へ伝達され、FASN遺伝子の転写を上昇させると推定し、消化管から脳へ至る求心性の自立神経を切断した(Vagus)ラットを作成した。本動物に無脂肪食を給餌し、2時間後にFASNおよび関連遺伝子の発現量を測定した。その結果、FASN mRNA量は偽手術を行った(Sham)ラットよりも増加傾向であり、SREBP1c mRNAは有意に上昇していた。このことは推定していた結果と異なり、消化管からの求心性のシグナルは、FASNの遺伝子発現を抑制することに寄与していると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食餌組成を変化させた試験食でのFASNおよび関連遺伝子の発現量について現在解析を行っている。DNAマイクロアレイの結果も合わせて解析を行い、FASNの遺伝子発現誘導に関わる食餌中の因子を明確にする必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
求心性の自律神経切断した動物での解析に引き続き、肝臓に至る遠心性の自立神経切断動物での解析を行う。 自立神経系を介して、FASNの発現抑制を行う食品因子の同定を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
食餌組成を変化させた試験食を給餌した肝臓の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイによって作成し、FASNの遺伝子発現誘導に関わる食餌中の因子を明確にする。
|