ミルクには未知の免疫抑制因子が存在するのではないかという申請者独自の考えに基づき、各種実験動物を用いて検討したところ、牛乳ペプチド画分であるMKFがマウスT細胞の抗原特異的および抗CD3抗体刺激による増殖応答を抗原やMHCの種類に依存することなく、完全に抑制できることを平成23年度に見出した。さらにMKFは、鶏卵アレルギーモデルマウスであるOVA-IgEマウスの脾臓細胞のアレルゲンに特異的な増殖応答やIgE産生応答、1型糖尿病モデルであるNODマウスの自己抗原に特異的なT細胞応答も強力に抑制できることを明らかにした。 平成24年度には、MKFがナイーブなBALB/cマウスT細胞のConAや抗CD3抗体刺激によるIL-4、10、17、IFN-γ応答などを大きく低下できることを見出し、このような抑制現象がBALB/cマウスをOVA(主要な鶏卵アレルゲンであるオボアルブミン)で免疫した場合にも、またOVA-IgEやNODマウスでも認められることを明らかにした。さらに、MKFをNODマウスに腹腔内投与することにより、1型糖尿病の発症原因となる自己免疫応答のin vivoにおける誘導や1型糖尿病の発症が抑えられることも示した。 平成25年度はMKFに含まれる活性成分の同定を目指し、MKFをHPLCにより20画分に分画し、そのうちの一つに抑制活性が存在することを見出した。さらにこの画分に含まれる物質の同定も行い、完了しているため、現在それらを順次化学合成し、その抑制活性を調べることにより活性成分の最終的な確認を試みている。 本研究のこのような成果は、MKFが新規免疫抑制剤として、特に鶏卵アレルギーや1型糖尿病の予防や治療に応用できる可能性を示唆する知見であるといえる。
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