前年度までの研究により、配列に相同性(類似性)が認められた既知アレルゲン、および可食部タンパク質の中からより重要と思われる分子を選抜し組換えタンパク質として大腸菌で発現させ、一部の患者の血清を用いてIgEとの結合を解析した。ここまでの成果により、確かにアミノ酸配列が何らかの既知アレルゲンに類似性を示す食物タンパク質には実際に患者血清IgE抗体との反応性を示す場合もあり、このような一次構造の類似性から食物アレルゲン候補の第一スクリーニングを行うことは意味がある可能性が示された。今年度は、さらに血清検体数を増やして解析し、特にアレルギー臨床医学分野の研究者の協力を得て、花粉症やアトピーなどアレルギー疾患の臨床症状が明らかな患者さんからの血清を用いて解析した。その結果、個体間でのバラツキが顕著に減少し、高頻度でIgE結合陽性を示す潜在的アレルゲンがより明確に示された。これら結果から、配列と発現の情報から選抜、絞り込みをするアプローチは、タンパク質の潜在的アレルゲン性の評価に有効であることが明らかとなった。また、同時に明らかにIgE結合陰性を示すタンパク質の存在も明らかとなり、その原因の解明が今後の研究課題として残された。
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