研究課題/領域番号 |
23658111
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小田 裕昭 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (20204208)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 寝たきり / 寝たきり動物モデル / 廃用症候群 / 脂質代謝異常 / 肝障害 / 健康寿命 |
研究概要 |
超高齢化社会において、病態とは異なる寝たきりになる人が増加している。高齢者は強度の運動不足になっていることも多い。寝たきり状態や強度な運動不足は、廃用性症候群と呼ばれ、いったん寝たきりになると、急速に衰え、復帰するのが困難であるため、寝たきりからの復帰を目指す栄養学は急務である。しかし、動物実験モデルが存在しないため、体の中で何が起きているかなど分子生物学的研究は全くされていない。申請者は、ラットをボールマンケージに簡易拘束した寝たきり動物モデルを初めて開発した。この寝たきりラットモデルにおいて、寝たきりのヒトで起こる高コレステロール血症をはじめ脂質代謝異常が起こることを見いだした。 本研究では、寝たきり状態で起こる脂質代謝異常や肝機能の悪化を遺伝子レベルで解析して、本寝たきり動物モデルを確立する。そして、高齢者の「生活の質(QOL)」の改善を目指して、寝たきりからの復帰を促進する食品成分の探索を行う。 寝たきりによって起きる症状、廃用性症候群は、表面的に現れる症状だけを対象にしており、そのメカニズムに迫る、生化学的・分子生物学的研究は皆無に近い。本モデルは、廃用症候群の分子メカニズムを明らかにする最初の動物モデルである。本モデルの確立により、寝たきりで起きる全身的異常を解明するとともに、寝たきりからの復帰を目指す食品、薬品の開発につながる可能性があり、結果として、高齢者の「生活の質」を改善して、健康寿命を延ばすことが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)寝たきり動物モデルを用いて、脂質代謝異常が起きるメカニズムの解析する。ボールマンケージによる寝たきり動物モデルから肝臓、筋肉、脂肪組織のRNA抽出し、1.アフィメトリクス社のマイクロアレー解析(多検体解析: n=3-6)を行う。2.バイオインフォマティクス解析を行った。現在、バイオインフォマティクス解析について、ジーンスプリング、IPA、DAVIDなどの有償・無償解析ソフトウエアを使い、遺伝子のクラスター解析、機能解析、パスウェイ解析、情報伝達経路解析を行っている。 (2)寝たきり動物モデルを用いて、肝障害が起きるメカニズムの解析をする。(1)と同様に肝臓RNAを抽出し、マイクロアレーならびにバイオインフォマティクス解析を行っている。 (3)寝たきり動物モデルの代謝異常を解析するため、肝臓、血液のメタボローム解析を行っている。寝たきり動物から得た肝臓、血液のメタボローム解析(極性分子と非極性分子の2種)を行っている。これは、脂質代謝以外の代謝異常を見いだすてめに、特にヒトで使用可能な寝たきり状態を評価できるバイオマーカーの探索をし、候補分子を選ぶことを目的としている。
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今後の研究の推進方策 |
寝たきり動物モデルに寝たきりからの復帰を促進する食品因子の探索を行う。寝たきり動物モデルに異なる食餌タンパク質を摂取させて、寝たきりによって起きる脂質代謝異常、肝機能異常の改善作用を検討する。予備実験において、寝たきりによる脂質代謝異常の改善効果を見いだしている大豆たんぱく質、卵白タンパク質、小麦グルテンを用いる。さらに、個別のアミノ酸についても検討する。 肝機能を改善させる作用を有するクルクミン、ピペリンなど食品由来の非栄養素を摂取させてその影響を検討する。さらに、脂質代謝、糖代謝を変動させる薬剤を寝たきり動物モデルに与えてその影響を検討する。(AMPKの活性化剤、PPARのアゴニスト、LXRのアゴニストなど) すでに進めている。バイオインフォマティクス解析にはまだまだ時間がかかるため、インシリコの解析を精力的に進め、完了させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物とマイクロアレー解析に大半を用いる。そこで必要な、プラスチック器具、ガラス器具、汎用試薬などの購入に充てる。
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