これまでヒトの寝たきり状態を再現することができる動物モデルがなかったため、私たちは動物の簡易固定装置であるボールマンケージを使って、実験的寝たきり動物モデルを開発した。この寝たきり動物モデルを用いて寝たきり状態からの復帰を促進する食品成分の探索を行う基礎実験を行った。この寝たきりモデルにおいて、体の中で何が起きているかを探索するため、肝臓遺伝子発現をマイクロアレー法により検討した。寝たきりラットモデルにおいて、血中コレステロール濃度が増加することを確認した。また、寝たきりラットにおいて、肝障害マーカーである血中 ALT、AST の活性が増加することを確認した。 この血清コレステロール濃度の増加は肝臓からの VLDL コレステロールと VLDL 中性脂質の放出速度の増加であることがわかった。 肝臓トランスクリプトミクス解析から、肝細胞の増殖、アポトーシスに関連する遺伝子群の変化が認められた。この遺伝子の変化は、肝障害がこれらの遺伝子発現を介した結果として起きた可能性を示している。また、含硫アミノ酸代謝の遺伝子発現にも変化が見られた。この含硫アミノ酸代謝の変動が、コレステロール・胆汁酸代謝を変動させた結果、血中コレステロール濃度を低下させたと考えた。また、対照群のえさとして用いたカゼインと比較して、卵白タンパク質や大豆タンパク質は血中コレステロール濃度の増加を抑えた。さらに、大豆タンパク質は寝たきり状態で起きる肝障害も完全に抑制することがわかった。これらの結果は食餌タンパク質などの食餌因子により寝たきり状態で起きる脂質代謝異常や肝障害を抑制することができることがわかった。
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