研究課題/領域番号 |
23658112
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神戸 大朋 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90303875)
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キーワード | 亜鉛欠乏 / 亜鉛トランスポーター / 食品因子 / 予防 / 大豆抽出物 / 消化管吸収 |
研究概要 |
亜鉛は、味覚、免疫、神経機能に重要な必須微量栄養素である。そのため、亜鉛の不足は、これら機能に重篤な影響を与える。近年、我が国では高齢者を中心に潜在的な亜鉛欠乏患者が増加していることが明らかにされており、その数は国民の2割を超えると試算されている。従って、亜鉛欠乏を効果的に予防することが健康社会の実現に重要となっている。亜鉛の吸収は、小腸上皮細胞に発現する亜鉛トランスポーターZIP4が必須の役割を果たすため、本研究では、ZIP4の発現を増加させる食品因子(亜鉛吸収促進因子)同定し、その効果の作用メカニズムについて詳細な解析を実施した。 昨年度の解析から、大豆抽出物にZIP4の発現を促進し、かつ細胞内の亜鉛量を増加させる活性を認めていたため、活性性分の単離同定を試みた。単一成分にまで精製できた分子の構造をNMR分析や質量分析、ガスクロマトグラフィーなど各種機器分析に供した結果、大豆サポニン類であることを突き止めた。さらに、大豆サポニン類のZIP4発現促進効果のメカニズムを詳細に解析した結果、大豆サポニン類は、ZIP4のエンドサイトーシスを抑制して分解を妨げ、細胞膜に留まらせることで亜鉛取り込みを高めていることを示唆する結果を得た。さらに、大豆サポニン類は細胞毒性をほとんど示さず、恒常的にエンドサイトーシスされる膜タンパク質の制御に大きな影響を与えなかったことから、その効果はZIP4特異的な効果であることが予想される。大豆サポニン類は、亜鉛吸収促進因子として非常に有用な成分であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大豆抽出物からZIP4発現促進因子を同定し、その作用メカニズムに関する解析も順調に進展しているため
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今後の研究の推進方策 |
見出した大豆因子の効果を動物実験にて評価すると同時に、より強力な活性を有する新たな因子の探索にも着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
見出した大豆因子の効果を動物実験にて評価するために必要な試薬類、及び、より強力な活性を有する新たな因子の探索に必要となる試薬類の購入費として使用。また、研究成果発表のための学会参加費や論文投稿費としても使用する予定。
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