研究課題
亜鉛は、生命活動に必須となる微量栄養素である。そのため、亜鉛の不足は、味覚障害、免疫機能低下、創傷治癒力低下などを引き起こす。近年、我が国では高齢者を中心に潜在的な亜鉛欠乏患者が増加していることが明らかにされており、その数は国民の2割を超えると試算されている。そのため、日々の食事により亜鉛を充足させ、その予防を実践することは極めて重要である。しかしながら、亜鉛の吸収効率は約30%と低く、すべての亜鉛が効率よく吸収されているわけではない。亜鉛の吸収を促進する食品由来の因子を見出すことが、亜鉛欠乏を効果的に予防するために重要となっている。これまでの解析で、大豆サポニン類が消化管上皮細胞に発現して亜鉛吸収に必須の役割を果たす亜鉛トランスポーターZIP4の発現を促進し、かつ細胞内の亜鉛量を増加させることを突き止めていたため、今回、食品添加物として使用される他のサポニン成分の活性について解析した。その結果、これらサポニンの中には、大豆サポニン類と同様の活性を有する成分が存在することが見出された。大豆サポニン類は、ZIP4のエンドサイトーシスを抑制して分解を妨げ、細胞膜に留まらせることで亜鉛取り込みを促進させていたが、このエンドサイトーシス抑制効果が、他の膜タンパク質の発現に大きな影響を与えないことを具体的に示し、その効果がZIP4特異的な効果であることを明らかにした。動物実験を用いて大豆サポニン類の亜鉛吸収促進因子としての効果を確認中であると同時に、各種サポニン類のZIP4発現促進効果についての構造活性相関に関する解析を進めており、できるだけ早く亜鉛吸収促進因子として有用性を決定させたい。高齢者に増えつつある亜鉛欠乏を予防する食成分として、サポニン類は非常に有用であると考えられる。
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