本研究は、食品機能成分であるカロテノイドによる免疫反応の制御について、脂質ラフトの機能制御の観点から作用メカニズムを解析することを目的とした。 まず、マスト細胞の高親和性IgE受容体(FcεRI)、マクロファージのToll様受容体4(TLR4)、B細胞のB細胞受容体(BCR)について、食品機能成分であるカロテノイドが、これらの受容体の脂質ラフトへの移行や免疫応答に与える影響を調べた。その結果、シフォナキサンチンなど5種類のカロテノイドは、肥満細胞、B細胞、マクロファージの活性化を抑制し、それぞれの受容体の脂質ラフトへの移行を阻害した。一方、いずれの細胞の活性化に対しても影響を与えないカロテノイドやマクロファージの活性化のみを抑制するカロテノイドも確認された。 上記で得られた知見をもとに、マスト細胞の高親和性IgE受容体(FcεRI)の抗原刺激による脂質ラフトへの移行について、脂質ラフトの主要な成分の1つであるスフィンゴ脂質に着目し、その量的変動を調べることで、その作用機序の解明を試みた。その結果、抗原刺激により、スフィンゴミエリン、グルコシルセラミド、セラミド量がそれぞれ増加し、脱顆粒を阻害するカロテノイドは、スフィンゴミエリンの増加に影響を与える可能性が示された。 以上の結果から脂質ラフトを介した免疫担当細胞活性化の抑制作用はカロテノイドの化学構造によって異なることが示され、またカロテノイドによる脂質ラフトを介した受容体応答の抑制機構にはスフィンゴ脂質代謝の変化が関わることが示唆された。
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