研究課題/領域番号 |
23658114
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安達 修二 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90115783)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 有機モノリス / クロマトグラフィー / 亜臨界流体 / モーメント解析 |
研究概要 |
エポキシ樹脂製の有機モノリスチューブ(内径1.0mm×長さ130mm)にパルス状に負荷したトルエンの溶出曲線から全空隙率を算出した.また,分子量の異なるポリスチレン等の溶出曲線から間隙空隙率を推定した.次に,疎水度の異なる5種の溶質(カフェイン,イソバニリン,バニリン,クマリンおよびメチルパラベン)について,種々の濃度で過剰量の試料液を付加したときの応答曲線の前端分析から24℃における平衡吸着量を算出した.カフェインおよびクマリンは線形な吸着等温線を示したが,イソバニリン,バニリンおよびメチルパラベンの吸着等温式は単純な式では表現できず,ラングミュア型とヘンリー型の吸着平衡を表す2種類の吸着サイトが存在する可能性が示唆された.とくにバニリンは特異な挙動を示し,ラングミュア型の等温式に従う吸着量が多く,インプリンティングの可能性が示唆された.これらの結果は,本法を分析に用いる際に濃度によって溶出時間が異なる可能性を示唆し,適用できる濃度範囲に留意すべきとの知見が得られた.次に,溶出挙動を記述するモデルについて検討した.シリカモノリスチューブについて,モノリスを円柱とみなすモデルが提案され,またモーメント解析によるパラメータの推算についても言及されている.前述の吸着平衡に関する知見に基づいて,線形な吸着平衡が仮定できる溶質濃度の低いときのクロマトグラムから有機モノリスに対しても本モデルが適用できるか否かを検討中である.また,クロマトグラムの広がりに対する軸方向,固液界面およびモノリス内の拡散の寄与の定量的な評価を行っている.当初予定していた有機モノリスへのアミノプロピル基の導入は検討するに至らなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
いずれの溶質についても比較的低濃度では線形な吸着平衡を示し,数学的な取り扱いも容易と想定していたが,念のため,種々の濃度での平衡吸着量を測定したところ,必ずしも線形な吸着等温線を示さないことが判明し,この点に関する詳細な測定を行ったために,やや遅れが生じた.しかし,吸着平衡に関する詳細な検討は有機モノリスクロマトグラフィーの特徴と限界を理解するうえで有用な知見である.
|
今後の研究の推進方策 |
逆相クロマトグラフィーへの適用とその数学モデルの展開で,平成23年度に検討できなかった項目を迅速に進め,遅れを挽回するとともに,当初から平成24年度での検討を予定していた順相クロマトグラフィーへの適用と解析を進める.
|
次年度の研究費の使用計画 |
試薬やクロマトグラフ部品等の消耗品を購入するとともに,平成23年度は実現しなかった学会等での発表を積極的に行うために旅費を使用する.また併せて,成果を英語論文として学術雑誌に投稿する予定であり,その際の英文校閲に謝金を支出する予定である.
|