内径1mm程度のステンレス管内に有機モノリスをマウントした新規な素材のクロマトグラフィーへの応用が試みられている.溶離液として亜臨界流体を用いることにより,分析時間の短縮とピークの広幅化の抑制,溶離液中の有機溶媒の使用量の低減を図ることを提案し,それを具現化するために必要な実験的並びに理論的な検討を行った.平成23年度は,疎水度の異なる5種の溶質(カフェイン,イソバニリン,バニリン,クマリンおよびメチルパラベン)のエポキシ樹脂性の有機モノリスへの吸着等温線を,過剰量の試料液を付加したときの応答曲線の前端分析により測定し,カフェインとクマリンの吸着等温線は線形であるが,イソバニリン,バニリンおよびメチルパラベンはラングミュア式とヘンリー式を融合した特異な形状となり,少なくともこれらの溶質に対しては2種類の吸着サイトが存在する可能性を示した.また,バニリンは極めて特異な挙動を示し,モノリスを作成する際のインプリンティングの可能性を示唆された.これらの結果に基づき平成24年度は,吸着平衡が線形とみなせる濃度で,バニリンとメチルパラベンを除く3種の溶質にテオフィリンとテオブロミンを加えた5種の溶質について,パルス応答法により溶離液中のアセトニトリル濃度と温度が吸着平衡(分配係数)に及ぼす影響を評価した.各溶質は空塔滞留時間の0.8倍から数倍の平均滞留時間で溶出し,有機モノリスに吸着するが,強くはなく,またアセトニトリル濃度や温度の影響は顕著ではなかった.また,高温ほど溶出曲線の幅はやや狭くなったが,相対的には分散が大きく,有機モノリス相内での溶質の拡散係数がかなり小さいことが示唆された.
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