研究課題
平成24年度は、食品中に含まれる非変異原性発がん物質による発がん機構の解明を向けて研究を推進した。特に、イソチアシアネート、ヒドロキノン、カテコール、カフェ酸およびピロリジンアルカロイドについて、ヒト培養細胞であるHepG2およびCaco2細胞へと添加実験を行った。具体的には、薬物添加後の培養細胞からmRNAを回収した後に、cDNAへと変換しすると共に、そのcDNAを用いた定量PCRを行う事で各薬物代謝を行うP450分子種の誘導を観察した。その結果、ヒト薬物代謝において重要な働きをするCYP3A4の発現誘導が観察された事から、CYP3A4が食品成分による発がん機構に関与している可能性が示唆された。そこで次に、このCYP3A4を大腸菌へと大量発現し、その機能を明らかにする事を試みた。具体的には、先の研究で当研究代表者が作製済みのP450発現用カセットプラスミド中へとヒトからクローン化したCYP3A4cDNAを導入した。その後、本cDNAを持つ発現プラスミドを大腸菌へと形質転換することで、新たなヒト薬物代謝系を構築した。最後に、このCYP3A4発現系を用いて種々の食品成分の代謝およびその活性化について検討した。その結果、キノコに含まれる発がん物質であるP-ヒドラジノ安息香酸、リンゴジュースやタマネギに含まれる発がん物質であるケレセチンを代謝することが判明した。現在、DNAメチル化認識酵素法や、バイサルファイト法を用いた解析により、エピジェネティックな変化がCYP3A4の遺伝子発現に与える影響を調査している。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度は、食品中に含まれる非変異原性発がん物質による発がん機構の解明を向けて研究を推進した。その結果、イソチアシアネート、ヒドロキノン、カテコール、カフェ酸およびピロリジンアルカロイドがヒト培養細胞であるHepG2およびCaco2細胞中の各薬物代謝を行うP450分子種であるCYP3A4を誘導することを明らかにした。この結果は、ヒト薬物代謝において重要な働きをするCYP3A4が食品成分による発がん機構に関与している可能性が示唆しており、当初の研究計画の一部を達成できたと考えられ、概ね研究計画通りであると考えられる。今後は、DNAメチル化認識酵素法や、バイサルファイト法を用いた解析により、エピジェネティックな変化がCYP3A4の遺伝子発現に与える影響を調査していく予定である。
今後は、DNAメチル化認識酵素法や、バイサルファイト法を用いた解析により、エピジェネティックな変化がCYP3A4の遺伝子発現に与える影響を調査していく予定である。具体的には、イソチアシアネート、ヒドロキノン、カテコール、カフェ酸およびピロリジンアルカロイドを添加した際に観察されるヒトCYP3A4の活性化が、二次的な要因として他の食品由来の化合物を代謝活性化する際の分子メカニズムをより詳細に明らかにしたいと考えている。
次年度は、大型機器類等の導入予定はない。よって、先に述べた今後の研究推進方策に基づいた遺伝子解析、蛋白質解析に必要な消耗品および試薬類を購入する予定である。また、積極的な研究結果の開示に向けて、関連する学会である”分子生物学会””農芸化学会”等の全国レベルの学会で発表を行う予定である。また、当該研究結果をまとめ、学術雑誌に論文発表をする予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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