研究課題/領域番号 |
23658117
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
羽倉 義雄 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (50237913)
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キーワード | 高温油中水 |
研究概要 |
常圧下での高温油中水の存在状態およびその安定化メカニズムの解明を行った.水の誘電率は,温度・圧力のほか,分散状態によっても変化することが知られている.そこで,開放系(常圧)の油槽(80℃~180℃の任意の温度に設定)に平行平板電極を設置し,吸水試料(多孔質セラミクス板に蒸留水を含浸させたもの)を油中に投入した際の油の誘電率を測定した. 測定した系全体(高温油中水+フライ油)の誘電率と連続相であるフライ油の誘電率から,高温油中水のみの誘電率を算出し,高温油中水の物理化学的状態を明らかにした.その結果,高温油中水は誘電率の値から凝縮水であり,100℃以上の高温分散相である油中に液相の水として存在していることを明らかにした.さらに、この高温油中水は分散相の温度が低いほど,長時間油中に滞留していることを明らかにした. さらに,高温油中水には飽和濃度があり一定濃度以上には油中に存在しえないことを明らかにした.この飽和濃度には温度依存性があり,低温ほどホールディングキャパシティが高いことも明らかにした.また,100℃以下では高温油中水が生成しないことから,吸水試料中の水は,100℃以上のフライ油中で一旦水蒸気となり油中に分散し,その後油中で凝縮し,液相の水として高温のフライ油中にW/O型エマルションとして存在していることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画とは計測手法を変更しているが,目的を達成するために必要な情報は十分に得られている.次年度に予定した計測器を計測条件に合わせたスペックに変更し,購入することにより当初計画との整合性も確保できる見通しである.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に基づき研究を推進する.すなわち,高温油中水の排除方法・長期安定化方法の確立を目指す. 高温油中水の安定性の制御因子としては,W/Oエマルション中の水滴部分の内部圧力(P),粒子径(V),温度(T)が考えられる.特に,亜臨界状態の水では,誘電率が有機溶媒と同程度にまで低下し,親油性が高まることが知られている.そこで,高温油中水の内部圧力(P)または温度(T)を低下させ,亜臨界状態から解放することにより高温油中水の排除を可能にする.さらに,高温油中水の粒子径をより小さくすることで,ラプラス圧を増大させ,エマルション粒子の耐圧性を高めることで,亜臨界状態の維持を容易にし,長期安定化を可能する.これらの知見をもとに,高温油中水の制御方法(排除や長期安定化)を確立する.さらに,本研究課題により得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究により,必要とする装置の温度スペックを確定することができたため,当初購入予定であった水晶振動子化学計測装置を購入し,当初計画に沿って研究を進める.
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