研究課題
様々な疾病や老化の過程に関与することが近年示唆されているミトコンドリアの品質管理機構「マイトファジー」(ミトコンドリア選択的オートファジー)を作用点とする食品成分を探索し、その作用機構を検討することを目的として、24年度では昨年度に引き続き培養細胞(HeLa)を用いたオートファジー評価系の検討と作用機構の解析を試みた。昨年度は、LC3やp62などのタンパク質についてウェスタンブロット法により培養細胞抽出液からこれらのマーカーを評価していたが、多検体同時評価が困難であったため、24年度ではイムノスロットブロット(ISB)法を応用し、48検体のp62発現を一斉に評価することが可能となった。本方法を用いてポリフェノール化合物47種類のオートファジー誘導活性評価を行ったところ、昨年度に活性物質として見出したルテオリンに加えて、その細胞内代謝物でもある3'-メチル化ルテオリンがより強力なオートファジー誘導活性を有することが明らかとなった。これらルテオリン関連化合物の作用機構を検討するためのケミカルプローブとしてケルセチンを出発としたビオチン化フラボノイド誘導体を化学合成し、これをプルダウンアッセイに応用することで細胞内相互作用タンパク質の評価が可能となった。二次元電気泳動を用いた検討から、本プローブに特異的に作用する細胞内タンパク質の存在が示唆された。一方、フラボノイド関連化合物のin vivoにおけるオートファジー誘導活性を評価するため、マウス臓器におけるp62発現について予備検討を行ったところ、臓器によってフラボノイドの代謝パターンやオートファジー誘導モデルである栄養飢餓に対する応答に差異があることが示唆された。この点を詳細に解析するため、24年度内では活性物質のin vivoにおける評価には至らず、25年度まで研究期間を延長し、さらなる検討を行うこととした。
3: やや遅れている
スクリーニングによって見出した活性物質のin vivoにおけるオートファジー誘導活性を評価するため、マウス各臓器におけるp62発現についてウェスタンブロットによる予備検討を行ったところ、臓器によってオートファジー誘導モデルである栄養飢餓に対するp62発現応答に差異があることが示唆された。また、ルテオリンやケルセチンを投与したマウス臓器・血液中のLC-MS/MS解析により、フラボノイドの代謝パターンに差異が認められることが明らかとなった。マウスを用いたin vivoにおける評価に先立ち、これらの点を詳細に解析する必要が生じたため、本研究課題の研究期間を25年度まで延長申請し、24年度内で行う予定であった活性物質のin vivoにおける評価について、25年度においてさらに検討を行うこととした。以上のような理由から、本研究は24年度で終了する予定であったが、25年度まで延長することとなり、予定の達成度からやや遅れている。
・動物レベルでのマイトファジー評価24年度までの検討で選抜されたマイトファジー促進性物質について、マウスを用いた個体レベルの評価を行うことを本研究の最終目標としている。選抜された候補物質についての体内動態・存在形態を理解すると同時に、各組織(血球、肝臓、腎臓、筋肉、脳など代謝や酸素消費に重要な組織)におけるオートファジーレベルの測定と組織から単離したミトコンドリアの機能評価を行うことで、食品成分によるマイトファジー促進によるミトコンドリア品質管理の意義を明確にすることが重要である。24年度までにマウスにおけるオートファジー評価についての予備検討を行ってきたが、ルテオリンの代謝パターンや臓器間におけるp62発現に差異があることが明らかとなった。この点を詳細に解析したのち、25年度(研究期間の延長を申請)においてはルテオリンをはじめとする活性物質によるオートファジー誘導活性をin vivoにおいて評価する。
残額についてはすべて、延長した研究期間において実施する実験(主にマウスを用いた動物実験)に必要な物品費に使用する。すなわち、マウスの購入費と得られた試料の性化学的解析に必要な試薬類に対して使用する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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