研究課題/領域番号 |
23658119
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
大東 肇 福井県立大学, 生物資源学部, 特任教授 (80026583)
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研究分担者 |
高橋 正和 福井県立大学, 生物資源学部, 講師 (80315837)
川畑 球一 福井県立大学, 生物資源学部, 助教 (60452645)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 食細胞 / マクロファージ / 抗炎症化合物 / 相乗作用 / 分子作用機序 |
研究概要 |
多くの生活習慣病の発症/増悪には、慢性炎症が関与している。よって農作物・食素材に含まれる抗炎症化合物には各種炎症性疾患の予防軽減効果が期待されるが、その作用は医薬用薬剤に比べて一般に弱い。一方、食品は多様な化合物を含む混合物であり、複数の抗炎症性化合物を含む例も多く、このような複合系では、作用機構が異なる化合物同士が相乗的効果を示せば、高い効力を発揮すると期待される。そこで本研究では、複数の食由来炎症性化合物を同時摂取する際、最も強力な活性を発揮する理想的な組合せと混合比率に関する合理的デザイン法を化合物の分子作用機構に基づいて確立することを目的とした。なお、マクロファージによる過剰な一酸化窒素(NO)ラジカル産生を炎症応答の指標とした。 我々が単離・構造決定した化合物や市販化合物を含め、フラボノイド、テルペノイド、クマリン類、クルクミノイド等から、20種あまりの化合物を選抜してランダムに組合せ、RAW264マクロファージ細胞へのNO産生抑制効果を検討した。 その結果、ルテオリンとクルクミン、ゲニステインとクルクミン、レスベラトロールとクルクミンの3種の組合せについて、NO産生抑制効果における相乗作用を見出した。さらにこれらの相乗作用は細胞アッセイ系においては、単独で約10~20%の阻害を示す濃度で組合せたときに、特に明瞭に確認できることが示された。さらにルテオリンと同じ作用機序が期待されるルテオリン以外のフラボン化合物(アピゲニン、クリシン、ジオスメチン)でも検討した結果、ルテオリンのような顕著な相乗作用は認められないことが明らかとなった。またゲニステイン以外の大豆イソフラボンおよび関連化合物(エクオール)についても検討したところ、顕著な相乗作用を示すのは、ゲニステインだけであった。また興味深いことに、エクオールとフラボン化合物の間には相殺作用があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のねらい通り、相乗効果を示す候補化合物の組合せを見出し、また明瞭な相乗作用を確認できる濃度比についても、およその見当をつけることができた。一方、相殺作用を示す組合せも見出した。 一方、当初はH24年度に動物実験のみを計画していたが、昨年度の実験結果より、複数の組合せが見出されたため、精密な計画を立てて動物実験に臨む必要性が生じた。そこで、化合物の組合せについてより精密な絞込みを行ってから実施するべきと判断された。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は当初、動物実験によるin vivo検証のみを計画していた。しかし、当初計画していたよりも検討すべき化合物の種類が増えたことや、確実に動物実験で成果が期待できる組合せをのみに絞込む必要性があると判断されるため、H24年度前半は、化合物の組合せの絞込みを重視し、後半で動物実験の実施を行う。また当初計画にはマウス潰瘍性大腸炎抑制試験およびマウス大腸がん抑制試験の2種類の試験を掲げていたが、当初の申請額よりも減額していることもあり、前者の潰瘍性大腸炎抑制試験に絞って研究を推進する。 また、培養細胞試験ならびに動物投与試験において、化合物の組合せがシグナル伝達分子(MAPK, NFkBなど)のリン酸化レベルと相関するのか、あるいはタンパク質翻訳やmRNA量と相関するのか検証し、相乗作用の分子機構に迫る方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の今後の研究推進方策に沿って、細胞培養による検討・分子機構解析を約60%の予算で、動物実験による検証を約40%の予算で実施する。 具体的には、以下の消耗品類の購入に使用する。(1)細胞培養用培地 (2)投与用化合物購入費 (3)Western試薬、RT-PCR解析試薬、その他一般試薬類(4)動物実験費用: 実験動物・飼料・床敷(投与試験用マウスの購入飼育費用)など(5)試験用化合物溶解のための溶媒、ガラス器具、アッセイ用プラスチック製品など
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