研究課題
菌根菌は樹木の成長や定着を促進する共生微生物である。多くの樹木は菌根菌に養分吸収の大部分を依存しており、菌根菌と共生しなければ樹木は全く成長できない。また菌根菌は厳しい土壌環境から繊細な樹木細根を物理的・科学的に保護する作用もあり、樹木のストレス耐性の向上にも貢献することが知られている。一般に、樹木のストレス耐性を向上させるために行う樹木自身の育種には膨大な時間と労力が必要である。そこで、幅広い宿主域を持つ菌根菌を選抜・育種して樹木に接種することにより、比較的短期間に多くの樹木のストレス耐性を向上できるのではないかと考えた。本研究では、耐塩性をひとつのモデルケースとして、樹木のストレス耐性の向上が可能なのか、菌根菌の選抜・育種が可能なのかを検討することを目的とする。本年度は、すでに日本各地から収集した菌株の一部を用いて、菌株の培養条件の検討を行うとともに、耐塩性の予備的なスクリーニングを行った。ヌメリイグチなどの一部の菌株では100mMの塩化ナトリウムを添加すると著しく成長が阻害されるものの、一部の菌種では逆に成長が促進されることが確認された。また、千葉と茨城の海岸の塩類集積地において菌根性子実体を採取し、菌株の分離と胞子の採取を行った。現在は、さらに広い塩化ナトリウム濃度でより多くの菌株の培養スクリーニングを行っているほか、胞子発芽に及ぼす塩類の影響を解析中である。
3: やや遅れている
研究代表者の異動のため研究環境が大きく変わったため、必要な機材の準備やスペースの確保などに時間や労力、予算をさく必要があったため。
大筋では当初の研究目的に従うものの、一部の計画を変更し、配分された研究予算内で一定の成果が挙げられるようにする。
実験に必要な研究用消耗品を中心に、調査や成果発表に必要な旅費を確保する。次年度内に全額執行予定。
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