チャを含む特定植物の地上器官は、大部分の植物にとって有害なアルミニウム(Al)を多量に集積する。Al局在や共輸送における関与物質の実体を明らかにするため、本研究では、カテキン等が縮合したフラボノイド重合体であるプロアントシアジニン(PA)に着目し、ツバキ・モッコク科計8種の樹液におけるPA濃度と根および葉におけるPA分布を調べた。 モッコク以外の7種全てで根内皮にPAが集積した。また、全種で木部道管と篩管近傍にPAが集積した。ヒメシャラでは根端から地上器官まで連続して内皮と木部道管および篩管にPAが集積した。一方、ツバキ科4種で根表面にPAは集積せず、モッコク以外のモッコク科3種で根端を含む全てで、モッコクで根端から約3 mmより基部側でPAが集積した。モッコク以外のツバキ科種全てで枝の木部道管と篩管にPAが集積したが、モッコクでは枝の篩管にのみにPAが集積した。 葉では、ヒメシャラ・ナツツバキで背軸側、チャ・ヒサカキで向軸側の表皮細胞壁にAlが局在した。後者では葉表皮の細胞質領域にもAl分布が認められた。これらの種すべてで葉肉細胞および葉脈の通道組織にPAが分布した。モッコクでは主側脈の篩管のみPAが集積した。 枝条の樹液のPA濃度は、Al集積性4種でAl非集積性種モッコクの10倍以上で、ヒサカキで最大だった。Alフリーで育成したヒメシャラ、ヒサカキ、サカキ苗の枝条の樹液のPA濃度は全て前述のAl集積性種と同レベルとなり、樹液のPAはAlによらず一定であることがわかった。水挿ししたヒサカキ切枝の樹液PA濃度は水挿し前の10%以下となり、地上部の樹液PAが根からの輸送に由来する可能性が示唆された。樹液のPA濃度はAl濃度よりも低かったことから、地上部へのPAとAl輸送に共輸送以外の要因が含まれる可能性が示唆された。
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