研究課題/領域番号 |
23658123
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
松本 武 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40555869)
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研究分担者 |
岩岡 正博 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40213269)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | かかり木 / 発生メカニズム / 力学的特性 / 危険性 / 処理方法 |
研究概要 |
23年度は「かかり木の力学的特性の解明」と「発生したかかり木の危険性の評価」を中心に研究に取り組んだ。「かかり木の力学的特性の解明」では,23年度前半に傾斜地のヒノキ林内において2立木間に発生したかかり木の元口を移動させて処理する際の牽引力を測定し,上方伐倒・下方伐倒別の処理方法の特性について評価した。かかり木の処理に要する力は上方伐倒の方が有意に小さく処理に要する仕事の平均値でも上方伐倒の方が小さかった。伐倒方向へ引き倒す場合の仕事の推定値との比較では,元口移動による処理法の優位性は確認できなかったがこれらの結果をまとめ論文(松本・岩岡,2012)として発表した。23年度後半では上方伐倒時に2立木間で発生したかかり木を伐倒方向に引き倒し,そのときの牽引力を測定した。実験の結果,2立木間隔 が狭くなるにつれてけん引力 の上限値は線形に増加する傾向が示された。また,本研究と先行研究(松本,2010)および23年度前半の研究から,2立木間で発生したかかり木の伐倒方向別(上方と下方)および方法別(引き倒しと元口移動)の比較が可能となり,上方伐倒かかり木の元口移動が処理に必要な力が最も小さく,上方伐倒かかり木の伐倒方向への引き倒しが最も大きな力を要するということが明らかとなり,現場でのかかり木処理に科学的な知見を提供できた。これらの成果を現在論文として執筆中である。「発生したかかり木の危険性の評価」ではかかり木を発生させ,そのかかり木の一部にセンサーを取り付け,立ち入り禁止表示などの安全対策を十分に施した上で,一定期間放置し,自然落下の有無と自然落下するまでの時間を計測した。単木のかかり木では放置したかかり木の50%が,2立木間で発生したかかり木の75%が放置したかかり木の多くが風による外力により外れていることが明らかとなった。本研究の成果は現在論文として執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初23年度に実施予定であった「かかり木発生プロセスの解明」については,実際の立木を3次元画像解析ソフトを使用して解析する際のデータの採取が当初の想定よりも困難であったため,24年度に実施することとし,24年度に実施予定であった「かかり木の力学的特性の解明」を23年度に前倒しして実施することとした。成果としては現実の作業に重要な指針となるデータが得られた。また,この課題に取り組む中で3次元解析のための実験法も併せて試行し,24年度に「かかり木発生プロセスの解明」に効率的に取り組める目途がついた。23年度実施予定であった「かかり木の発生確率と発生したかかり木の危険性の評価」については「かかり木の危険性の評価」は実施済みであるが,「かかり木の発生確率」については24年度に「かかり木発生プロセスの解明」と併せて実施することとしたため。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は「かかり木発生プロセスの解明」と「かかり木の発生確率」を同時進行で行う。 東京農工大学農学部附属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センターフィールドミュージアム唐沢山(以下FM唐沢と称す)内のスギ・ヒノキ人工林を対象に,本研究課題では伐倒方向を考慮せず,ランダムに伐倒した場合と最も空間が開けた場所に伐倒する伐倒方向を考慮した場合,および列状間伐の3種類の実験を行いかかり木となる確率を算出する。ランダムに伐倒する実験の際に伐倒木がどのようなプロセスを経てかかり木に至るのか(あるいは至らないのか)について明らかにする。解析には伐倒からかかり木に至る過程をビデオカメラで撮影し,モーションキャプチャソフトウェアを用いて伐倒木の幹・枝の軌跡および周辺隣接立木の幹・枝の挙動を動的・立体的に把握し,数値化した上でモデル化を試みる。また,発生したかかり木を牽引処理することで23年度に引き続き「かかり木の力学的特性の解明」にも取り組む。以上の研究を年内に行いその後はこれまでの研究を総括し,林分条件に応じたかかり木発生の確率と発生した場合の危険性および合理的で安全なかかり木処理方法についての指針を作成し最終報告書として取りまとめる。得られた成果は研究室のHPにも掲載するとともに,国・都道府県等の林業技術者養成・研修機関等に研修テキスト等の形で提供する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度には「かかり木の力学的特性の解明」を前倒しして実施したが,人力で操作するウィンチでの牽引であったため一定のスピードで牽引できずに牽引力データに脈動が現れること,予備的実験の結果かかり木の振動が24年度実施予定の「かかり木発生プロセス」の実施に当たっては不都合となることが予想されたため当初の予定通り携帯エンジンウィンチの購入を予定する。実験は本学演習林(FM唐沢)および岐阜県加茂郡東白川村で行うためその調査旅費と実験補助を依頼するための謝金,成果発表のための学会参加費(春期の日本森林学会,秋期の森林利用学会)に使用する。また,研究成果を広く公表するための学会誌への投稿のために投稿料,英文校閲費,論文別刷り購入費については当初想定していたよりも投稿論文数が増えるため他の費目を調整し増額する予定である。
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