研究概要 |
"ナラ枯れ"はカシノナガキクイムシの大量穿入(マスアタック)と,この昆虫が樹体内に持ち込む病原菌"なら菌"の樹木内蔓延により起こる伝染病である.これまで多くの研究が積み重ねられて来たが,未だその発病機構は明らかになったとはいえず,適切な防除方法も確立されていない。本研究では植物が傷害に応答して生産することが知られている植物ホルモンであるジャスモン酸メチル(以下MJ)と、エチレン(Et)を外部から寄主樹体に接種し、寄主の抵抗性反応を誘起し、カシノナガキクイムシに対する獲得抵抗性の誘導を試みた。その結果、本来寄主への飛来に見られるマスアタックに変化が起こり、飛来ピ.クが不明瞭になり、かつ飛来総数が減少した。しかし、このように植物ホルモンで処理した個体の中には、本来の飛来ピーク時から遅れて大量飛来が生じるものがあり、このような処理の効果が一時的なものであることを伺わせた。この実験で観察された植物ホルモンの効果はカシノナガキクイムシが生産する集合フェロモンに影響を与えている事が示唆されたが、そのことを確かめるためには更なる研究が必要である。
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