研究課題/領域番号 |
23658126
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60237071)
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研究分担者 |
藤巻 玲路 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (90401695)
小山 里奈 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (50378832)
長田 典之 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 研究員 (80400307)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 窒素利用 / 木本種 / 硝酸態窒素 / 炭素コスト / 14CO2 |
研究概要 |
植物は窒素を主に土壌中からNH4+あるいはNO3-の形で吸収し同化する。特にNO3-利用の場合には、NO3-をNH4+へと還元する過程を含んでいるため、NH4+利用に比べて余計にエネルギーを必要とする。NO3-還元は根と葉で行われるが、根でのNO3-還元は根呼吸によって還元エネルギーを得ており、炭素コストを伴う。今日の窒素降下物の増加に対する森林植生の応答を評価するためには、窒素条件の違いが植物の炭素コストへ与える影響について調べる必要がある。植物のNO3-・NH4+の吸収割合やNO3-を還元する場としての根と葉の比重などは植物種・光条件によって異なることが知られているが、特に、木本植物についての情報は非常に限られている。そこで、本研究では我が国に広く分布するアラカシを対象とし、窒素・光条件の根呼吸量つまり炭素コストへの影響を解明することを目的とした。アラカシを3か月間ポット栽培し、葉・根の硝酸還元酵素活性(NRA)を明条件・暗条件下で測定した。また、ポットの施肥窒素条件としてNO3-のみ・NH4+のみ・窒素源なしの異なる3条件における根呼吸量を放射性炭素14Cパルス・ラベリング法によって定量し、窒素利用形態の違いが根呼吸活性(根重量・14CO2吸収量当たりの14CO2放出量)に及ぼす影響を評価した。この結果、葉・根の両方でNRAが確認され、明条件では葉のNRAが上昇し、暗条件では根のNRAが上昇することが確認された。一方、根呼吸測定実験では、根からの14CO2放出量はNO3-施用条件で他の2条件よりも高く、根呼吸活性が根における硝酸還元によって増加したことが確認された。以上から、根に硝酸還元酵素を有するアラカシを用いて、木本植物で初めて硝酸還元に伴う根呼吸の定量に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標である木本についての測定を順調に行うことができた。ただ、苗木の成長が予定より早かったため測定用のチャンバーを当初計画より大きくした。測定用チャンバーをいれるグロスチャンバーの大きさはRIセンターに既存のため同じである。その結果、グロスチャンバーに入る測定用チャンバーの数が少なくなってしまい、実験できた個体の数が予定より少なくなった。また、硝酸還元酵素活性について光条件での明瞭な違いが観測できた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の遅れを取り戻すため、測定回数を増やす、樹種の選択を再検討するなどの工夫が必要である。硝酸還元酵素活性について光条件での明瞭な違いが観測できた。この点については木本の特性とも考えられ、光条件での応答や光と温度との関係などさらに詳細に確認を行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
チャンバーと苗の大きさの関係から昨年度計画していた実験をすべて行うことができなかった。加えて、昨年購入した苗木が大きくなりすぎているものがあるので、小さい苗を購入し、測定を継続する。硝酸還元酵素については、光条件についての検討を加えるとともに、光と温度の関係を明らかにし、炭素固定と窒素利用の間の関係を追求する。そのためには、光と温度の操作がより大規模にできるチャンバーが必要であり、借用のため鳥取大学などへの旅費などに研究費を使用することになる。
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