研究課題/領域番号 |
23658127
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 直紀 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40335302)
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研究分担者 |
清野 達之 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (40362420)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 半島マレーシア / 湿潤熱帯 / 季節熱帯 |
研究概要 |
京都市の京都大学構内において,落葉広葉樹3樹種(カツラ,ユリノキ,トチノキ それぞれ3-6個体)と常緑広葉樹のアラカシ(5個体)を用いて,木部の電気インピーダンス測定を4月から2週間おきに行った.電極にはステンレス釘を用い,先端が木部に達するところまで打ち込んでいる. また,同じ調査個体に対して,樹幹の軸方向に5cmの間隔で打ち込んだステンレス釘(直径1.3mm,長さ25mm)を電極とし,2011年の6月7日と7月19日の2回にわたり300, 400, 500Vの直流電圧を0.5秒通電して,形成層へのマーキングを行った.2回のマーキングはいずれも同じ部位に対して行った.12月12日に,2つの電極間の真ん中に当たるところから成長錐を用いて木部試料を採取し,顕微鏡切片を作製してマーキングの様子を観察した. 木部の電気インピーダンスは春から秋にかけて何れの樹種でも小さな値をしめし,1月中旬に最大値を示した.電気インピーダンスには温度依存性があるため,測定値が直ちに樹木の生理活性を表しているとは言えないが,形成層帯の幅や材の含水率に応じて変化しているものと推定される. 電気による形成層マーキングには樹種特異的な感度の違いが見られ,カツラとトチノキでは300Vの電圧で材に異常組織を形成した.これに対してアラカシとユリノキでは400V以上でないと異常組織の形成が見られなかった.木材解剖学的な変化として,異形の柔細胞の形成,薄壁の道管と木部繊維の形成,柔細胞内への沈着物の蓄積が観察された. 高電圧による異常組織の形成は半径方向に0.2mm程度の小さい幅に収まり,繰り返しマーキングを行っても互いに影響を及ぼさないものと判断した.また,木部の同じ場所にマーキングを行うことも可能であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,京都市において4樹種の電気インピーダンス測定と高電圧マーキングを開始した.初年度の調査から,高電圧マーキング法が年輪を持たない樹木の肥大成長研究に有効との見通しを得ることができた.結果の一部は3月の日本木材学会大会で発表した.研究分担者の清野が山梨県からつくば市に異動になり,当初予定していた高標高の樹種との比較が不可能になったので,異なる気候条件下(京都市とつくば市)に生育する同じ樹種の比較に変更した.その一方で,海外の研究協力者の支援により,マレーシアでの予備調査を1年早く開始することができた.したがって,研究計画の一部変更はあったものの,全体としては当初の予定よりも少し早いペースで進行しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
京都での電気インピーダンス測定と高電圧マーキングを次年度も継続する.同じ調査をつくば市においても開始し,成育環境の異なる2地点における樹種の比較を進める.これによって手法的な検討を進めながら,マレーシアの季節熱帯と湿潤熱帯において,代表的な造林樹種と天然林樹種に対して,2つの手法を適用する.次年度において熱帯樹木への高電圧マーキング手法の適用可能性を評価することができる見通しである.
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次年度の研究費の使用計画 |
国内での調査に必要な物品費と成果発表のための学会参加費に使用する.また,マレーシアでの調査の進捗状況の点検および試料採取のため2回の現地調査を予定しており,そのための海外調査旅費として使用する計画である.
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