研究課題/領域番号 |
23658130
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
笹原 克夫 高知大学, 自然科学系, 教授 (90391622)
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研究分担者 |
酒井 直樹 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域水・土砂防災研究ユニット, 主任研究員 (40414990)
伊藤 和也 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 安全研究領域建設安全研究グループ, 主任研究員 (80371095)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 斜面崩壊 / 切り土掘削 / 降雨 / せん断ひずみ / ひずみ増分比 / 間隙水圧 |
研究概要 |
斜面中の土の圧縮ひずみ増分とせん断ひずみ増分の比であるひずみ増分比が斜面の変形・破壊の指標になり,斜面の変形・破壊に関するひずみ増分比~せん断ひずみの構成関係を立証して,斜面崩壊発生予測式へ発展させることを目的に,以下の2種類の実験を行うことにより,記載されたような結果を得た.(1) 人工降雨による砂質模型斜面の崩壊実験 砂質土により成る,土層厚に比べて斜面長の長い直線斜面に,人工降雨を与えて,斜面の変形・破壊の過程と,斜面内の間隙水圧や土壌水分の状態を計測した.その結果,(1) 斜面内の土要素のせん断ひずみとその地点における間隙水圧の関係は,土の応力~ひずみ関係と同様な双曲線関係を描く.また複数の降雨を与えると,前回の降雨における間隙水圧の最大値になるまではせん断ひずみの増加は非常に小さく,それを超えるとせん断ひずみが顕著に増加するというように,せん断ひずみは間隙水圧に対する降伏挙動を示す.(2) 斜面内の異なる深さにおけるひずみ増分比とせん断ひずみの関係について検討した.その結果浅い箇所ではせん断ひずみが大きくなると土層が膨張し続けるため,ひずみ増分比は減少し続ける.それに対して深い箇所ではせん断ひずみの増加に伴ってひずみ増分比は0に近づく.最もすべり面に近い位置におけるひずみ増分比は斜面の崩壊直前にはほぼ0となった.(2) 水平地盤の鉛直切り土に伴う斜面の変形・破壊の追跡 水平地盤の鉛直方向の掘削を模擬した実験を行い,斜面内のせん断ひずみと圧縮ひずみ,地表面の沈下量を計測した.結果としてすべり面が非常に高角度な崩壊が発生した.それに伴いせん断ひずみがほとんど増加しなかった.結局すべり面付近に配置された変位計により計測された鉛直沈下量が,崩壊直前に加速的に増加したことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,崩壊発生前の斜面中の変形挙動の中でせん断ひずみや間隙水圧,圧縮ひずみをせん断ひずみで除したひずみ増分比の間の構成関係を検証し,それをもとに斜面崩壊発生予測のための有効なモニタリング指標と解析手法を考案するために,「(1) 人工降雨による砂質模型斜面の変形・破壊挙動の計測」と「(2) 水平地盤の掘削による変形・破壊挙動の計測」の2種類の実験を行った.以下に各々の実験を元に実施した検討の達成状況を示す.(1) 人工降雨による砂質模型斜面の変形・破壊挙動の計測 平成23年度は2種類の成果を挙げた.一つ目は斜面内の間隙水圧とせん断ひずみの間の構成関係を立証したことである.こちらについてはほぼ満足すべき達成度であるが,斜面勾配や土質など様々な条件の斜面においても確認していく必要がある.平成24年度は昨年度と異なる条件の模型に対して構成関係を検討することを行う必要がある.二つ目は圧縮ひずみ増分とせん断ひずみ増分の比であるひずみ増分比とせん断ひずみの間の構成関係を見いだしたことである.この成果に基づいて平成24年度は,斜面崩壊発生予測に適用可能なモデルを組み立てる必要がある.(2) 水平地盤の掘削による変形・破壊挙動の計測 当初の予定に反して,平成23年度は水平地盤の掘削実験を行った.この理由は水平地盤の掘削の方が,破壊に至る過程での斜面内の応力比の変化が大きいのではないかと考えたからである.しかし平成23年度の実験ではすべり面が掘削面に近い位置にほぼ垂直に近い勾配で生じてしまい,結果として斜面内の変形の計測が限られた範囲でしか行えなかった.平成24年度はすべり面勾配の緩い崩壊を発生させるような実権条件を検討し,実施してみたい.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度で最終であるが,今年度は「(1) 人工降雨による砂質模型斜面の変形・破壊挙動の計測」と「(2) 斜面長に比べて土層深の大きな盛土の切り土による崩壊実験」を実施する.(1) 人工降雨による砂質模型斜面の変形・破壊挙動の計測 これについては上記「現在までの達成度」でも述べたように,勾配や土質など様々な斜面条件が異なる模型実験を,小型模型を用いて繰り返し,昨年度見いだした構成関係の適用性を確認することとする.(2) 斜面長に比べて土層深の大きな盛土の切り土による崩壊実験 すべり面勾配が緩やかで,崩壊に至る過程における変形範囲が広くなるような条件での模型実験を行いたい.そのための条件設定が必要である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行に置いて,4月に支払いすべき経費が残っているため,次年度使用額が存在する用に見えるが,実際には全額を執行予定である.そのため次年度の研究は,当初の予定通り進める予定である.
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