研究課題/領域番号 |
23658132
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
渡辺 信 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (10396608)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マングローブ / 森林生態 / 保護 / 保全 |
研究概要 |
植物の概日リズム研究はほとんどが一年生草本のモデル植物を材料としており、現在得られている知見の大部分は人工環境下での実験に基づくものである。そのため、植物と自然生態系に多様に存在する各種情報因子との相互作用に関するデータ蓄積は少なく、自然界の植物生態系で優占種となる樹木に至っては、概日時計の研究は殆ど行われていない。しかしながら、樹木を研究材料とした概日時計の数少ない研究例からは一年生草本では得難い興味深い知見が得られており、光や温度といった制御要因で説明されてきた多くの生理現象の中に、実は概日リズムが制御要因として関与しているものがある可能性を示唆している。沖縄県八重山諸島の西表島において、琉球大学熱帯生物圏研究センター西表研究施設の管理下にある、稚樹が生育するマングローブ林に調査プロットを設置した。また、マングローブ林外の干潟にも地盤高が一定のプロットを設置し、異なる樹種のマングローブ稚樹を定植し、潮汐作用による水位レベルの変化と、それぞれのプロットにおける植物体が湛水する様子を画像データとして記録、葉の就眠運動を中心とした視覚的な植物体の反応を定量化した。一方で、概日時計関連遺伝子群の発現に影響を及ぼすことが予想される調査プロットの光や潮位変動等の環境因子のモニタリングデータの収集を継続している。これと並行して、実験室内で日長条件と湛水条件を変化させて栽培実験を行い、遺伝子発現解析用の葉の試料を採取した。RNA抽出は、既に実績のある改変CTAB法を用い、逆転写反応によりcDNAを合成後、5'& 3'RACE-PCRにより標的遺伝子の単離を行った。一部のターゲット遺伝子について、マングローブ樹種毎に葉からDNAを抽出、化学蛍光ラベル(DIG)によるサザンハイブリダイゼーションを行い、樹種毎に各標的遺伝子のコピー数を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画したロードマップを概ね踏襲し、想定した成果を挙げているため。
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今後の研究の推進方策 |
自然環境下でのデータを収集するため、潮の干満が明瞭な大潮の状況を中心に、調査プロットの植物体から時系列毎に葉を中心とした試料を採取する。この際に、湛水条件下で高発現すると予想される遺伝子群の発現も同時に調べる。調査プロットには干潮時には徒歩、満潮時には西表研究施設が所有するカヤックでアプローチし、4時間おきに水上もしくは水没した材料の葉を採取する。試料の採取は24時間、もしくは48時間連続で行うことを予定している。夜間の試料採取作業では概日リズムに影響を与えない緑色中心の光源を使用して作業を行う。試料は採取直後に洗浄し、デュワー瓶内の液体窒素に投入、西表研究施設に持ち帰り、遺伝子発現解析を行う。最後に、フィールドと室内実験の双方で収集したデータの解析を統合して行い、更にファインスケールでの解析が必要と判断される事象に関しては、予め実験室内で栽培している試料を用いてその事象に最適の実験系をデザインし、詳細な分析及び解析を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に遺伝子発現解析関連の試薬と消耗品、年度末の研究発表の為の出張費。場合によってはギガシーケンサーによるシーケンスを外注することもある。
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