研究課題/領域番号 |
23658133
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
小長谷 賢一 独立行政法人森林総合研究所, 森林バイオ研究センター, 研究員 (30582762)
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研究分担者 |
平尾 知士 独立行政法人森林総合研究所, 森林バイオ研究センター, 研究員 (90457763)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 花成ホルモン / 毛状根 / マツ / 着花 / Flowering locus T |
研究概要 |
樹木は播種から開花に至るまで数年から数十年という長い栽培年月を必要とする。この長い成熟期間は効率的な育種や遺伝解析の障壁となっている。着花を促進するためには、鍵となる花成ホルモンについての知見を集積し、人為的に発生制御することが突破口と考えられる。本研究では毛根病菌と呼ばれる遺伝子導入ベクターを用い、花成ホルモンを生産する不定根を樹体幹部へ発生させることで、地上部を遺伝子組換えすることなく開花を迅速に誘導させる新技術の開発に挑む。針葉樹の花成ホルモン関連因子に関して遺伝子情報を収集・活用し、マツ材線虫病抵抗性育種が急務であるマツ属の育種年限の短縮に応用することを目的とする。 本年度は毛根病菌接種のためのマツの組織培養系の検討と、遺伝子発現ベクターの構築、および毛根病菌の形質転換を中心に行った。まず、マツへの毛根病菌接種に使用する供試植物材料として、マイクロプロパゲーションによるクローン増殖した幼植物体と無菌的に播種することで得られる実生苗の2種について検討した。最終的に利用が想定されるマツ材線虫病抵抗性品種の不定枝からのマイクロプロパゲーションを既報の培養条件を用いて検討したところ、シュートの誘導効率が低く、接種試験に供試できる材料を十分量得ることが困難であることが判明した。そのため、実生苗の無菌培養法を確立し、安定した供給が可能となったため、以後の試験では実生苗を用いることとした。次に、不定根で花成ホルモンを発現させるベクター系について検討を行った。可視化マーカーとして緑色蛍光タンパク質遺伝子を用い、遺伝子を高発現させるプロモーター、およびターミネーターの選定をパーティクルガン法により行った結果、El2ΩプロモーターとHSPターミネーターの組み合わせが最も発現量が高いことが明らかとなった。そこで本ベクターを毛根病菌へ形質転換し、現在、マツ実生苗への接種試験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、挿し木苗による毛根病菌の摂取法について予備試験を行った。花成ホルモンの遺伝子単離は次年度行う予定であるが、必要なマツ遺伝子ライブラリーの作製や想定花成ホルモン関連遺伝子の情報収集は既に完了している。次年度利用予定の発現ベクターの作製は既に行ったので、順調に計画通り進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マツ実生苗からの毛状根誘導系を確立する。また、マツより花成ホルモン遺伝子を単離する。マツでの試験は結果を得るのに長期の培養時間を要すると考えられるため、モデル植物としてタバコおよびポプラを使用し、接種試験を同時並行して行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
毛根病菌接種試験のための植物育成用資材費、および各種植物種より遺伝子の単離を行うため、核酸抽出、PCR、シークエンス等に必要な 消耗品費を計上する。また、学会に出席し、研究成果の発表を行うための旅費を計上する。
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