研究課題/領域番号 |
23658133
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
小長谷 賢一 独立行政法人森林総合研究所, 森林バイオ研究センター, 研究員 (30582762)
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研究分担者 |
平尾 知士 独立行政法人森林総合研究所, 森林バイオ研究センター, 研究員 (90457763)
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キーワード | 花成ホルモン / 毛状根 / マツ / 着花 / Flowering locus T |
研究概要 |
樹木は播種から開花に至るまで数年から数十年という長い栽培年月を必要とする。この長い成熟期間は効率的な育種や遺伝解析の障壁となっている。着花を促進するためには、鍵となる花成ホルモンについての知見を集積し、人為的に発生制御することが突破口と考えられる。本研究では毛根病菌と呼ばれる遺伝子導入ベクターを用い、花成ホルモンを生産する不定根を樹体幹部へ発生させることで、地上部を遺伝子組換えすることなく開花を迅速に誘導させる新技術の開発に挑む。針葉樹では研究の進んでいない花成ホルモン関連因子に関して遺伝子情報を収集・活用し、マツ材線虫病抵抗性育種が急務であるマツ属の育種年限の短縮に応用することを目的とする。 昨年度までにマツ実生苗の無菌培養法の確立と、緑色蛍光タンパク質を可視化マーカーとした毛状根における高発現ベクターを作製した。本年度は本ベクターを毛根病菌へ形質転換し、マツ実生苗への接種試験を行った。まず、MAFFジーンバンクより入手した8系統の毛根病菌へそれぞれベクターを形質転換し、実生苗の子葉基部胚軸へ接種した。その結果、biovar 1と比較してbiovar 2に属する毛根病菌がマツにおいて効率的に不定根を誘導することが示唆された。また、不定根誘導における培養法を検討し、ペーパーウィックを用いた液体培養により効率的かつ迅速に不定根を誘導できることが明らかとなった。しかしながら、不定根における緑色蛍光を確認することができず、本発現ベクターでは花成ホルモンを高発現することが困難であることが判明した。そこで、タバコをモデル植物とした試験を並行させることとした。その結果、タバコおよびNicotiana benthamianaへbiovar 1に属する毛根病菌を接種することにより、強く緑色蛍光を発する組換え毛状根の誘導に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マツでの不定根誘導に成功したが、目的遺伝子の発現が不十分である問題が生じた。そこで、マツで想定通りに行かない場合の計画に従い、モデル植物での解析を始めた。想定通りタバコ毛状根における遺伝子の高発現に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
マツでの遺伝子発現が困難な問題についてはベクター系の改良等を進めるとともに、タバコでの試験も並行する。本年度確立したタバコへの遺伝子発現系を用いて実際に花成ホルモンの発現試験を行い、早期着花性等について検定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
毛根病菌接種試験のための植物育成用資材費、および遺伝子の発現解析を行うための、核酸抽出、PCR、ベクター構築等に必要な 消耗品費を計上する。また、学会に出席し、研究成果の発表等を行うための旅費を計上する。
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