研究課題/領域番号 |
23658138
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
江前 敏晴 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40203640)
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研究分担者 |
五十嵐 圭日子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (80345181)
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キーワード | バイオアッセイ / インクジェット / 紙 / 培地 / バクテリア |
研究概要 |
バクテリアの一例として遺伝子組み換え大腸菌の分散液を用い、試験用インクジェット印刷機を使ってシート状に成型した寒天培地上に印刷した。ピエゾ方式で吐出されるときのせん断力下でも大腸菌が生存し、2日後にどのドットでもコロニーの成長が確認された。 次にインクジェットで吐出される1滴あたりのバクテリアの数が一定になるかどうかを確認するために、バクテリアのモデルとして直径1μmのアクリルラテックスエマルションをインクジェット紙上に吐出し電子顕微鏡で観察して粒子数を数えた。粒子数は±10%程度の誤差に収まっていた。さらに、複数の生育環境条件を小面積で実現することに加え、操作性、印刷作業性、易廃棄性の向上のために、培地を保持する容器であるシャーレに代えて紙を使用できないかどうかを検討した。まず、ポリスチレン(高い疎水性)のトルエン溶液にろ紙を浸漬し乾燥させることにより全面を疎水化した。その上に培地エリアとなる5mm×7mmの矩形を配置したパターンをトルエンで印刷しエッチングを行った。トルエンは既に紙上にあるポリスチレンを溶解し、周囲部分に流し出すので矩形内は親水性に戻る。またトルエンに青色染料を溶解させておくことにより親水性部分を可視化することができた。培地水溶液をこの親水性エリアに印刷し、さらにその上にバクテリアをインクジェット印刷し、コロニー成長を観察することになるが、この段階はまだ手作業で行っている。培地水溶液をインクジェットプリンタで印刷できるように寒天を硫酸で加水分解し、粘度及びゲル化温度の調整を行っている。また、成長後のコロニーの面積など評価には、共焦点レーザー走査顕微鏡を使い、レーザーの波長を切り替えることにより識別して親水性のエリア、培地の分布をそれぞれマッピングできることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寒天培地を紙基板の上に混ざることなく複数のエリアに分けて固定することが可能となった。これは紙基板上に親水性/疎水性エリアのパターンを作ることであるが、培地そのものも印刷によって形成する目標はまだ達成されていない部分である。これは寒天の処理(加水分解)によって粘度とゲル化のしやすさを制御することが途中段階ではあるもの見えてきたことからおおむね順調に進んでいると言える。最終的なコロニーの成長度合いの判定には共焦点レーザー走査顕微鏡を適用できることもわかったため、それらを組み合わることが次年度の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
インクジェット印刷が行えるような寒天培地の調製法の検討を引き続き行い、適切な処理方法を確立すること、バクテリアを含む水分散液を調製し、インクジェットプリンタの別のカートリッジに充填して寒天培地上に印刷する技術を確立することを最低の目標として設定している。これに加え、数時間培養後のコロニーの成長を顕微鏡システムと画像処理技術を用いて行うための基礎的な実験を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
バクテリアを含む水分散液の調製と成長観察を行うためのインキュベータ関連の機器類の購入(物品費)、実際に実験を遂行する博士課程の学生に対する謝金(人件費・謝金)に主に充てる。
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