超音波を使用した木材の非破壊評価は超音波センサーと材料の界面にカップラントの塗布が必要とある。しかし,カップラントは塗りむらや拭き取りによる作業効率の低下,木材内部へのしみ込みによる測定の不安定さが問題であった。これらを克服するために,本研究課題では空中超音波を使用して非接触な非破壊評価法の開発を目指した。最終年度は初年度に生じた問題点を解決し,下記2点の意義ある研究成果を得た。 ・問題点の解決:初年度は実大寸法(辺長100mm)の試験体の半径および接線方向の計測が困難であった。最終年度は空中超音波探触子の公称周波数を400kHzから200kHzに変更して,伝播速度の計測が可能なことが明らかになった。 ・空中超音波伝播特性に与える物理的性質の影響:試験体を全乾,気乾,含水率20%,飽水状態と4種類の含水率に調整して,伝播速度を計測し,含水率の影響を検討した。樹種はスギ,ヒノキ,ブナ,ケヤキを使用した。伝播速度は繊維,半径,接線いずれの方向でも全乾状態から含水率20%まで大きく減少した。飽水状態での伝播速度は含水率20%よりもわずかに変化した。以上より,空中超音波により含水率による伝播速度の変化を非接触で捉えられることが明らかになった。 ・木材の内部欠陥の2次元可視化:スギの心持ち試験体(辺長100mm)に空中超音波探触子を走査させて伝播速度分布を計測した。軸方向の伝播速度は中心(髄)付近が最小,外側に向かって増加するように分布した。横(半径・接線)方向の伝播速度は計測できない箇所が存在した。これらの箇所は試験体の表面や内部に節や割れの存在が確認された。これより横方向の超音波伝播速度の分布と内部欠陥の関連性が明らかになった。 以上,研究期間内の成果は,空中超音波の利用で木材の非破壊評価法に「非接触」を付加することが出来,新らたな評価法の道が開拓できたという点で非常に意義がある。
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