研究概要 |
本研究では、魚類の性連鎖DNA配列を同定する方法の確立を目指し、ゲノムサイズが比較的小さいナイルティラピアで技術的検討を行っている。この研究分野では、この2年間で大きな進展があった。まず、トラフグの性はDNAの1塩基多型によって決定されるという報告があり、また、ニジマス遺伝的雄(XY)と雌(XX)の未分化生殖腺のRNA-seq(発現RNAの包括的解析)の比較によって性連鎖DNA配列を特定したという報告があった。対象魚種が1塩基多型のような微小なDNAの雌雄差による性決定機構であった場合、ゲノムサブトラクションからの性連鎖DNA特定は技術的に不可能である。従って、平行してニジマスで実施された未分化生殖腺のRNA-seqからの同定法も試行している。 ゲノムサブトラクション法の検討については、サブトラクション後のAFLP解析からは親世代から子世代に亘って組換えを生じない性連鎖DNA配列は特定できなかったため、次世代シーケンサー(NGS)による解析を試行している。 未分化生殖腺のRNA-seq解析に関しては、用いるサンプルの検討を行った。これまで未分化生殖腺において、濾胞刺激ホルモン受容体(Fshr)遺伝子が孵化後6日目から性的2型性発現を示すことが解った。このことから、孵化後4および5日目のXXまたはXYの未分化生殖腺からRNAを抽出し、Illumina社のHiSeq2000によってシーケンスした。その結果、XXからは平均97bで45,758,757リード数、XYからは平均97bで44,172,448リード数、合わせて8,695Mbの塩基配列が得られた。これらをアセンブルし、N50長400bの446,533コンティグが構築され、151Mbの総塩基配列が得られた。コンティグに対しそれぞれのサンプル由来のリード数カウントを行い、約10万のXY特異的発現配列が選抜された。
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