研究概要 |
本研究では、優れた生活習慣病予防効果やアンチエイジング効果が報告されている機能性カロテノイドを生合成する海洋細菌を見出し、その生合成系に及ぼす光刺激の影響を明らかにすることを目的とする。平成23年度の成果は以下の通りである。(1)海水や海藻、海底堆積物等からカロテノイド合成細菌の探索を行い35株を分離した。(2)分離菌のうち黄色の呈色が強いSS8株とオレンジ色を呈した11ShimoA1株を選択し系統解析を行った結果、Flavobacteria科のAlgibacter lectusとJejuia pallidiluteaと同定された。(3)SS8株が合成するカロテノイドはゼアキサンチンであった。(4)11ShimoA1株は、主要なカロテノイドとしてゼアキサンチンを合成するとともに、新規カロテノイドである(3R)-2’-(3-methylbut- 2-enyl)-3’,4’-didehydro-1’,2’-dihydro-βΨ-carotene-3,1’-diol (2’-isopentenyl-mtxol)を合成すること見出した。(5)11ShimoA1株は青色光(470nm)により2’-isopentenyl-mtxolの合成が促進されることを見出した。(6)11ShimoA1株およびPolaribacter sp.株は、赤色光(660nm)によりカロテノイド合成には影響が認められないものの、増殖が促進されることを認めた。(7)Bacillus megaterium ALA2株が、フコキサンチンをフコキサンチノールへと変換することを明らかにした。 これらの成果は、非光合成細菌による機能性カロテノイドの生合成や構造変換を示すものであり、特に光刺激がそれらのカロテノイド生合成系の制御や活性化能をもつことを示す興味深い知見であるため、それらの遺伝子制御機構に関する研究展開が期待される。
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