研究課題/領域番号 |
23658161
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村山 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60293552)
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研究分担者 |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 社会行動 / 遺伝子 / イカ / タコ / 水産資源 |
研究概要 |
本研究では、発達した感覚・神経系を持ち、群れという機能的な社会システムを作るイカ類の行動の個体差、すなわち個性に注目し、その背景となる遺伝子の探索を目指す。「海の霊長類」と称されるイカ類について、その複雑で発達した社会システムを「個性」という観点から詳らかにする。遺伝子型が選抜指標となれば、資源管理や養殖技術開発、水族館学に多大な貢献が期待される。23年度は、遺伝子解析の条件検討と、行動評価の検討を主として行った。1.遺伝子解析の条件検討:ケンサキイカ、アオリイカ、ホタルイカ、スルメイカ、モンゴウイカ、ソデイカの外套膜の組織よりDNAを抽出し、ミトコンドリアのCOI領域の762塩基の配列を解析して、登録塩基配列との比較により、実験条件の信頼性を確認した。遺伝子型解析を行うための実験条件を検討した。さらに、非侵襲的なDNA抽出条件を検討するために、表面の粘膜を綿棒でぬぐう方法法についても検討した。アオリイカの種内で、対馬と沖縄に由来する個体間に塩基配列の差異が見られた。さらに、飼育アオリイカ25個体から試料を採取し、8個体で解析を行ったところ3ハプロタイプが見いだされ、この領域の多型を指標として母系の血縁と行動との比較ができることがわかった。2.飼育個体の行動評価法の検討:個体差の評価基準の作成:アオリイカ個体の群れにおける順位やネットワークでの位置付け(ハブ個体、周辺個体など)をもとにShy, Bold等の性格の評価基準を作成し、評価値の高い個体、低い個体からそれぞれDNAを抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子解析については、DNA抽出、PCR等の条件を確定することができ、さらにアオリイカ種内でのミトコンドリア塩基配列の多様性を利用して地域差や母系の血縁の推定がでたのは大きな進歩であった。行動解析については、飼育下での個体識別にもとづく観察と実験により、社会関係の解明がすすみ、個体の行動特性をスコア化できた。以上より、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の成果にもとづき、24年度は試料数を増やして個体ごとの行動評価を行い、遺伝子型を解析する。またまた次世代シーケンサーを用いて、行動特性の候補遺伝子の探索を行う。1.行動評価:飼育下のアオリイカの行動評価を行う。社会ネットワークや行動実験に基づいて、より精密な指標によるスコア化を目指す。2.遺伝子解析:行動を評価した個体からDNAを抽出し、ミトコンドリアのCOI領域、マイクロサテライトの遺伝子型を解析する。生体からの非侵襲的なDNA抽出と型判定の条件を検討する。またアオリイカの卵塊、ホタルイカの群など、野生下のグループ内の構成個体の血縁関係を解析し、野生群内の遺伝的構造を明らかにする。遺伝子型や血縁関係の、行動特性や社会関係への影響について考察する。3.新規候補遺伝子の探索:また次世代シーケンサーを用いて、行動特性の候補遺伝子の探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費として、京都大学と琉球大学の研究打合せ、学会発表、試料採取のための費用を予定している。物品費として、次世代シーケンサー消耗品などの遺伝子解析試薬、イカの飼育のための費用を予定している。
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