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2011 年度 実施状況報告書

フグのウオジラミがフグの鰭のみに寄生する分子メカニズムを探る

研究課題

研究課題/領域番号 23658162
研究機関広島大学

研究代表者

大塚 攻  広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00176934)

研究分担者 鈴木 譲  東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40107412)
田角 聡志  東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (90359646)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードウオジラミ類 / copepodid / フグ / 細胞表面ディスプレイ法 / サブトラクティブPCR法 / レセプター / リガンド
研究概要

トラフグの鰭に発現しているレセプターとウオジラミ類Pseudocaligus fuguの感染期であるcopepodid期の虫体表面に存在するリガンドとの結合が寄生部位特異性をもたらしているのではないか、という仮説のもと以下の研究を進めた。まず昆虫細胞を用いた細胞表面ディスプレイ法によって、モデルとして選んだトラフグの膜タンパク質2種類について発現および細胞表面への提示が確認されたことから、鰭由来のcDNAライブラリーをトランスフェクトさせた場合でも膜タンパク質を昆虫細胞表面に発現できるであろうと考えられた。現在、実際のライブラリーのスクリーニングを行っている最中である。 これと並行して、鰭で多く発現している遺伝子をサブトラクティブPCR法によって同定することを試みた。鰭、特にその表面は皮膚とほぼ同じ構造をもつため、発現している遺伝子の大部分は同一であると考えられた。そこでこれら2つの組織からcDNAを調製し、鰭において皮膚よりも発現量の多い遺伝子の断片を得た(サブトラクション)。G3PDHはほとんどすべての細胞において発現量がほぼ同じと考えられる遺伝子だが、これに対するプライマーを用いたPCRの結果、サブトラクト前のcDNAを鋳型とした場合にはバンドが認められたがサブトラクト後の場合は認められなかった。このことから、サブトラクトは問題なく行えたと考えられた。このライブラリーをクローニングベクターに組み込み、これまで約200クローンについてシーケンスを得ている。現在、さらに多くのクローンについてシーケンシングを進めている最中である。 さらに、ウオジラミ類の感染期の感染行動を観察した。感染期は宿主の鰭に第2触角、顎脚で付着後、第2小顎で鰭組織を掘削する行動を示し、感染後約2日目にfrontal filamentの形成が完了し、chalimus期に変態した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞表面ディスプレイ法に関しては、鰭cDNAライブラリーからレセプターのスクリーニングを試みるところまで研究を実施できた。その過程においていくつかの問題に直面したが、既にそれらに対する対策を練って研究を進めている最中で、平成24年度の早い段階で克服できるものと考えられる。サブトラクティブPCR法に関しては、トラフグの皮膚および鰭において皮膚よりも発現量の多い遺伝子をいくつか拾い上げることに成功した。サブトラクト後のcDNAライブラリーにはこれまで同定できていない断片がまだまだ含まれていると思われ、この中に直接的あるいは間接的にウオジラミ類の感染期の感染、変態を誘発するような分子が含まれていることが期待される。 感染期の感染行動を時間的スケール上でほぼ把握できたが、感染行動を実験室内で人工的に誘発できるような方法を現在、模索中である。 以上、本年度の成果は鰭で固有に発現している遺伝子を同定するとともにその機能を精査し、感染期の感染行動、変態を実験室内で誘発させるといった次年度以降の実験につながるものであると考えられ、おおむね順調に進展しているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

細胞表面ディスプレイ法において生じた問題は、磁気ビーズによって回収される細胞の数が少なかったことに起因する。このため、実験開始時の細胞数を10倍程度増やすか、反応に用いるバッファーを変えたり時間を変えたりするなど、実験条件についてもう少し検討を加え、さらなる実験を進めているところである。この問題は新年度の早い時期に解決できると考えられ、候補となるレセプター分子がいくつか同定できることが期待される。 サブトラクティブPCR法においては、宿主のトラフグの鰭において皮膚よりも発現量の多い遺伝子をいくつか見つけることができたことから、サブトラクションそのものは成功したと考えている。今後、さらに多くのクローンに関してシーケンスを読み進めることで、より多くの候補遺伝子を得ていく予定である。その後、これらの候補遺伝子の配列を調べることにより偽遺伝子でないことを確認した上でその機能を精査していく。 また、本年度進めてきたウオジラミ類の感染期の感染、変態に関する行動を実験室内で再現させる実験をさらに進展させることで、これらの行動に関するバイオアッセイ法を確立する。このバイオアッセイは候補遺伝子の機能解析に大いに役立つことが期待される。このように分子生物学的、生物学的実験を組み合わせて得られた結果を総合的に考察することにより、ウオジラミ類の感染期の感染、変態を誘発する物質の絞り込みを行っていく。

次年度の研究費の使用計画

宿主の鰭で発現している遺伝子の種類、機能の解析および遺伝子産物の特定、感染期の行動観察、バイオアッセイ法の確立のために研究費を使用する。つまり、実験に必要な試薬類、消耗品の購入、大学院生による研究補助および派遣に関わる旅費に対して研究費が主に使用される。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 寄生虫の宿主特異性に関わるフグ遺伝子の探索

    • 著者名/発表者名
      平林陽・木戸慎一・木南竜平・細谷将・甲斐渉・菊池潔・城夕香・末武弘章・良永知義・小川和夫・鈴木譲
    • 学会等名
      日本比較免疫学会第23回学術集会
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      平成23年8月22日
  • [学会発表] トラフグのゲノム育種

    • 著者名/発表者名
      鈴木譲・菊池潔
    • 学会等名
      平成23年度日本水産学会秋季大会、日本水産学会シンポジウム「フグ研究 とトラフグ生産技術開発の最前線」(招待講演)
    • 発表場所
      長崎
    • 年月日
      平成23年10月2日

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公開日: 2013-07-10  

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