研究課題/領域番号 |
23658162
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大塚 攻 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00176934)
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研究分担者 |
鈴木 譲 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40107412)
田角 聡志 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (90359646)
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キーワード | 「国際情報交換」(連合王国) / ウオジラミ類 / トラフグ / 寄生部位特異性 / PCR / 生活史 / 感染 / Pseudocaligus fugu |
研究概要 |
トラフグ鰭由来cDNAを発現ベクターに組み込み、昆虫細胞High Fiveにトランスフェクトした。このように得られた細胞ライブラリー(多様性約100万)を培養し、得られた培養上清に対するPseudocaligus fuguの反応性について検討した。コントロールにはインサートを含まない発現ベクターをトランスフェクトさせた細胞の培養上清を用いた。Y字型試験管を用いた感染期コペポディド幼体の選択実験では、鰭由来cDNAをインサートした昆虫細胞の培養上清や宿主飼育水への嗜好性を明らかに示した。以上の結果は、トラフグ鰭で発現している分泌性タンパク質のいずれかがP. fuguの感染期を寄生部位である鰭に誘引していることを強く示唆している。 サブトラクティブPCRに関しては、昨年度から継続して候補遺伝子の探索を行っている。これまでに約350クローンについて塩基配列を得ることができた。これらの中に分泌性タンパク質が多数含まれていた。 ウオジラミ類の感染メカニズムについての化学的アプローチに加えて、P. fuguを含むウオジラミ類の生活史における成長段階数、成体の再感染能力の有無について現在でも活発な議論のある問題に関しても顕著な成果を得らることができた。つまり、ウオジラミ類においても通常のカイアシ類と同様、コペポディド期に相当するステージは6期(Pseudocaligus属、Caligus属などではコペポディド幼体1期、カリムス幼体4期、成体1期、Lepeophtheirus属などではコペポディド幼体1期、カリムス幼体2期、前成体2期、成体1期)存在し、成体でも再感染機能のある種が存在することの確証を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鰭cDNA発現昆虫細胞ライブラリーはもともと膜タンパク質のスクリーニング系として確立したものだが、分泌性タンパク質の遺伝子もライブラリー内に含まれるため培養上清中にこれらが分泌されていることが想定された。本年度、Pseudocaligus fuguの誘引活性を調べるためのアッセイ系を確立することができ、さらには培養上清に対して実際に誘引活性を示すという知見を得ることができた。この成果は今後誘引分子の同定に向けて重要なものであるといえる。 サブトラクティブPCRに関しては、本年度も引き続き配列解析を進め、部分配列の数を順調に増やすことができた。これらは誘引活性の有無を調べるための候補分子となるもので、より多くの候補が得られたことは今後の誘引分子の同定につながると考えられる。 また、ウオジラミ類の生活史に関して混乱していた成長段階数、成体の再感染機能に関して新たな知見を得ることに成功した。 以上、来年度において今後研究を進展していく上で欠かせない成果を得ることができ、おおむね順調に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果により、細胞ライブラリーの培養上清に対してPseudocaligus fuguが誘引活性を示すことが明らかとなった。今後は細胞ライブラリーを10~100等分したものそれぞれの培養上清に対する反応性を検討し、誘引活性を示したものについてさらに分画をするといった操作を繰り返すことによってライブラリーのスクリーニングを行い、誘引物質の同定につなげることを目指す。 サブトラクティブPCRについては擬陽性のクローンが少なからず得られてしまうので、今後はこれらのうち実際に鰭で発現するものの皮膚では発現しないものを絞り込み、これらの遺伝子のcDNAの全長配列を決定した上で組み換えタンパク質を作製し、これに対するP. fuguの反応性の有無について検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞ライブラリーに関しては、ライブラリーの維持およびスクリーニングのため必要となる培地や試薬、プラスチック器具の購入に使用する。サブトラクティブPCRに関しては、遺伝子の同定や組み換えタンパク質の発現といった実験に必要となる試薬類やキットの購入に使用する。研究打ち合わせのための旅費、得られた成果を学会、学術雑誌に公表するための経費として使用予定である。
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