サケの卵はイクラや筋子などの食品として商品価値は極めて高いが、イクラを採取した後に排出される卵巣外皮は、素材としての機能性について殆ど研究されていないため利用価値がなく廃棄処分されている。一方、申請者は、これまでの研究において、サケ卵巣外皮の粗抽出物中に魚の成長を促進する機能性因子の存在を示唆する結果を見出し、次いで、アセトン処理した卵巣外皮の1N塩酸アセトン抽出残渣の80%アセトン抽出物にニジマス肝臓のインスリン様成長因子の発現を増加させるペプチド群が存在することを明らかにした。平成25年度は、80%アセトン抽出物を各種クロマトグラフィーに付すことによる成長促進因子の単離法を検討した。 卵巣外皮から調製した80%アセトン抽出物をゲル濾過クロマトグラフィーに付して分画し、凍結乾燥したフラクションを高性能液体クロマトフラフィーに付してペプチド群の精製を試みたが、目的とするペプチド群は、極めて難容性が高く、凍結乾燥することにより不溶化することが分かった。そこで、ゲル濾過フラクションを、直接、高性能液体クロマトグラフィーに付することにより、分子量10、14および18 kDaのペプチド群を効率よく精製できることが分かった。分子量10、14および18 kDaのペプチド群は分子内にジスルフィド結合を有さないこと、また、アミノ末端が、それぞれピログルタミンであることを明らかにした。 卵巣外皮の80%アセトン抽出物を添加した飼料をニジマス稚魚に摂餌させると、脳下垂体の抽出液を添加した飼料の成長促進効果よりは劣るものの対照群よりも体重が著しく増加することが分かった。これらのことより卵巣外皮の80%アセトン抽出物に、魚類の成長促進に関与する新規の成長促進因子が存在することを強く示唆する。
|