研究課題/領域番号 |
23658168
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
江口 充 近畿大学, 農学部, 教授 (40176764)
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研究分担者 |
谷口 亮人 近畿大学, 農学部, 助教 (10548837)
永田 恵里奈 近畿大学, 農学部, 助教 (20399116)
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キーワード | サンゴ / クロマグロ / 養殖 / 物質循環 / 細菌群集 / サンゴ粘液 / 有機物負荷 / 共存共栄 |
研究概要 |
近畿大学水産研究所奄美実験場のクロマグロ養殖イケスのロープには、美しい造礁サンゴが生育している。この造礁サンゴは大量の粘液を放出する。サンゴ粘液は周辺海水の100倍以上もの高濃度で有機炭素や窒素、リンを含み、高い密度で細菌群が存在し、周辺の細菌群の組成や活性に大きな影響を与えている。海洋細菌群は、養殖の残餌や排泄物等の有機物を分解・無機化を担っている。サンゴ粘液の影響を受ける細菌の群集構造を明らかにすることは、クロマグロ養殖-サンゴの共存関係を解明する一助となる。 イケス周辺の天然海水のみの試料(SW)、天然海水にサンゴ粘液を1:1の比で加えた試料(SW+Mucus)、サンゴ粘液に滅菌海水を1:1の比で加えた試料(Mucus)を用意し、一定時間培養し、海洋細菌の群集構造の変化を比較した。SWにおける細菌群集構造は、培養の前後であまり変化しなかった。SW+Mucusの細菌群集構造は、培養前・後で大きく変化した。培養前のSW+Mucusは、SWの群集構造に似ていたが、培養後にはMucusに類似するようになった。これらの結果は、海水のみでは起こらない細菌群の変化をサンゴ粘液が促すことを示す。培養前・後においてSWで最も優占している細菌群は、クロマグロ養殖場水域で活発に増殖しており、現場の物質循環を駆動する重要な細菌種である可能性が高い。しかし、培養前のSW+Mucusでは確認できたこの細菌種が、培養後には確認できなくなった。サンゴ粘液は、ある種の細菌に抗菌作用を示す。培養後に確認できなくなったこの細菌種は、サンゴ粘液の抗菌作用により、増殖が抑制されたのかもしれない。これらの結果は、クロマグロ養殖場いけすロープ上のサンゴ周辺では、海水のみと異なり、粘液の影響を受けた独自の細菌群集構造が形成されており、物質循環過程に影響している可能を示す。
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