研究概要 |
日本産フグ類の主要毒成分であるテトロドトキシン(TTX)は、フグ類の体内で生合成されると考えられてきが、TTXは、フグ類以外でもツムギハゼ、ヒョウモンダコおよびヒモムシなどからも相次いで検出され、さらに、有毒カニの消化管、紅藻類の体表やフグ類の腸内、体表粘液、肝臓などからTTX産生能を示す(共生)細菌が単離されたことから、フグ類が体内に蓄積するTTXは、TTX産生菌を起源とする生物濃縮を伴った食物連鎖によることが示唆されている。しかしながら、TTX産生菌によるTTXの生合成経路や関連する酵素ならびに遺伝子群は未だ同定されていない。 そこで本研究では、天然クサフグの消化管内容物からTTX産生菌として報告されているVibrio alginolyticusを単離し、全ゲノムを解析してTTX生合成経路に関する遺伝子群の同定を試みた。相模湾産天然クサフグの消化管内容物を滅菌半海水で段階希釈し、これをV.alginolyticusの選択培地VAL agarに塗抹して37℃で一晩培養した。陽性コロニーを回収し、dnaJ遺伝子および16s rRNA遺伝子の塩基配列を解析して菌株を同定した。V.alginolyticusと同定された6検体を、1%NaClを含む1%phytone peptone液体培地で27℃で7日間培養し、遠心分離して菌体を回収した。得られた菌体に9倍量の0.1%酢酸を加えて沸騰水浴中にて10分間加熱後、遠心分離して上清を回収した。これを分画分子量1,000の限外濾過に供して濾液を回収し、この濾液をLC/MS/MSおよびMALDI-TOF-MSで分析してTTX産生能を検討した。TTXが確認された菌株およびTTXを産生しなかった菌株を液体培養して菌体を回収し、市販のキットを用いてゲノムDNAを抽出した。現在、調製したゲノムDNAは次世代シーケンサーで解析中である。
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