研究課題/領域番号 |
23658175
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
児玉 正昭 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任教授 (40050588)
|
研究分担者 |
潮 秀樹 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (50251682)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ベトナム |
研究概要 |
ベトナムのニャフー湾よりドウモイ酸生産珪藻Pseudo-nitzschia sp.を採取し、単種培養に成功した。これまで温帯域で採取されたドウモイ酸生産珪藻P. multiseriesではそのドウモイ酸生産に環境中の細菌の関与が指摘されている。そこで今回得られた熱帯産Pseudo-nitzschia sp.の培養液より細菌の分離を試み、15株の細菌を分離した。次に得られたPseudo-nitzschia sp.を滅菌培地で洗浄する方法で無菌化を試みたが、洗浄した細胞を新たな培地に加えると生長が遅くなり、この操作を繰り返すとPseudo-nitzschia sp.は全て死滅した。従って本種のドウモイ酸生産能を見ることはできなかった。この結果は従来の方法で熱帯産のPseudo-nitzschia sp.を無菌化することは困難であることを示した。今後抗生物質の使用など洗浄法以外の方法を検討する必要性がある。次に得られた細菌株をそれぞれ培養して菌体を集め、これらを等量のMeOHと共にホモジナイズし、遠心分離で残渣を除いて抽出物を作成し、ドウモイ酸検出用のHPLCに付したが、ドウモイ酸様物質は確認できなかった。筆者らはPSPの研究において、PSPに対する特異抗体が関連化合物の検出や同定、未同定成分の分離に効果的であることを経験している。ドウモイ酸は市販されているが高価であるので海藻より精製し、これを用いハプテン抗原を作製し抗体作製を試みた。得られた抗体はドウモイ酸とよく反応し異性体とは殆ど反応しなかった。そこで本抗体を用いて細菌成分との反応を調べたところ、得られた全ての菌が反応を示した。この結果は細菌がドウモイ酸を分子の一部つする化合物を持っていることを示唆する。そこでHPLCで分離した画分を抗体で検出し、抗体と結合する成分があることを認め、本成分が高分子成分であることを認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回は採集してきた熱帯産Pseudo-nitzschia sp.の培養には失敗したが、同培養液より複数の細菌を分離することが出来た。環境中の細菌はPseudo-nitzschia sp.のドウモイ酸生産を少なくも大きく増加させることが知られている.しかし細菌そのものにドウモイ酸が認められた例はない。筆者らはドウモイ酸が生物の持つ高分子生体成分の一部であると考えている。昨年度の研究で明らかになった細菌の持つドウモイ酸に対する抗体と反応する高分子成分の存在は、この成分が細菌の生存に必要な重要な生体成分であることを示唆する。従ってこの生体成分を明らかにすることはドウモイ酸の毒以外の活性を明らかにする研究につながってゆくと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
十分量のドウモイ酸に対する特異抗体を入手することが出来た。次年度は本抗体を用い、ドウモイ酸を分子の一部とする高分子成分を分離し、その性状を明らかにする。予備的に行なった実験では、本高分子成分は280nmに全く吸収を示さず、少なくもタンパク質ではないと考えられる。精製には抗体を結合させたアフィニティーカラムを多用する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費の殆どはカラム担体、HPLC用カラム、試薬などの消耗品に使うつもりである。市販の抗体の存在を検出する標識つき2次抗体キットの使用にも可なりの費用を要する。
|