研究課題/領域番号 |
23658177
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
柿沼 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (60303757)
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研究分担者 |
森田 晃央 三重大学, 生物資源学研究科, リサーチフェロー (20500804)
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キーワード | 海産被子植物 / アマモ / 海草 / 種子 / 発芽 / 多年生 / 花穂 / 花器官形成 |
研究概要 |
日本沿岸域アマモ場の主要な構成種であるアマモには,2つの繁殖型(一年生および多年生)が存在し,各繁殖型で構成される群落の形成・維持機構は大きく異なる.本年度は,環境要因がアマモの繁殖戦略に与える影響と,アマモ繁殖戦略の分子機構を明らかにすることを目的として以下の研究を行った. 1.アマモの新規花器官形成遺伝子群(MADSボックス遺伝子群)の単離・同定 陸上被子植物の花器官形成は,複数のMADSボックス遺伝子群によって制御されており,アマモの花器官(花穂)形成の分子機構においても,MADSボックス遺伝子群が重要な役割を果たしていることが考えられる.昨年度,アマモ場より採集した一年生および多年生アマモの生殖株と花穂を対象としてRACE PCRによるアマモMADSボックス遺伝子cDNAの単離・同定を試みたところ,SQUA,AG,SEP,TM8,SOC1サブファミリーと高い相同性を示す複数のアマモMADSボックス遺伝子cDNAが単離・同定された.再度,RACE PCRを行ったところ,新たにSVPおよびFULファミリーと高い類似性を示す複数のアマモMADSボックス遺伝子cDNAが単離・同定された.これら遺伝子群の発現解析を行った結果,一部のアマモMADSボックス遺伝子が,花器官形成過程において重要な役割を果たしていることが明らかとなった. 2.アマモの繁殖戦略に関わる遺伝子群の単離・同定 一年生アマモでは,種子に対する春化処理の有無や発芽温度によって,生長後の繁殖様式が異なるため,種子の発芽前後の環境水温が一年生アマモの繁殖様式を決定している主要因と考えられている.そこで,生長後の繁殖様式に顕著な違いが認められた3つの室内培養条件(未処理・低温発芽,春化処理・低温発芽,春化処理・高温発芽)で一年生アマモ種子の発芽体を調製し,各発芽体のcDNAライブラリーを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,生理・生態学的側面から環境要因がアマモの繁殖戦略に与える影響を明らかにすると共に,有性生殖の基幹となるアマモの花器官(花穂)の形成過程や種子の形成・成熟過程と花器官形成遺伝子群(MADSボックス遺伝子群)等の関連性を調べ,アマモ繁殖戦略の分子機構を明らかにすることである. 当初の研究実施計画には,(1)室内培養による多年生アマモ種子の発芽試験,(2)アマモの新規花器官形成遺伝子群(MADSボックス遺伝子群)の単離・同定,(3)屋外水槽培養による多年生アマモ発芽体の生長試験,(4)一年生および多年生アマモにおけるMADSボックス遺伝子の発現解析,(5)環境水温に適応したアマモ繁殖戦略に関わる遺伝子群の単離・同定,をあげていた.(1),(2),(4)についてはほぼ計画通りに研究が進み,環境要因(春化処理の有無と発芽温度)が多年生アマモの種子発芽に与える影響と,アマモMADSボックス遺伝子とアマモ花穂の形成・成熟過程との関連性を明らかにすることができた.また,(5)についても計画通りに研究が進み,アマモの繁殖戦略に関わる遺伝子群の単離・同定に必要な発芽体cDNAライブラリーを構築することができた.しかしながら,(3)については未着手であるため,次年度に行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,研究実施計画(3)屋外水槽培養による多年生アマモ発芽体の生長試験を行うことができなかった.これまでに,春化処理の有無と発芽温度の違いが,多年生アマモ種子の発芽率に大きく影響することが分かっている.そこで,各処理条件で得られた発芽体を屋外水槽で長期間培養し,春化処理の有無と発芽温度がアマモ草体の繁殖様式に与える影響を調べる. また,研究途中となっている研究実施計画(5)環境水温に適応したアマモ繁殖戦略に関わる遺伝子群の単離・同定については,当初の計画通りに進め,未処理・低温発芽と春化処理・低温発芽の発芽体cDNA,春化処理・低温発芽と春化処理・高温発芽の発芽体cDNAの間でcDNAサブトラクションを利用した発現遺伝子の比較解析を行う.次いで,各cDNAサブトラクションで単離されたcDNAの配列解析を行い,環境水温に適応した一年生アマモの繁殖戦略に関わる遺伝子群を同定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし.
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