研究課題
近年の食行動についての新たな視角からの分析を目指し、「産直」と「直売所」をオルタナティブフードシステムと位置づけながら、現代に適合する食料供給構造を再設計するための足掛かりをつけるための基礎的研究を行った。戦後わが国の食料消費の動向についてポストモダン論からの検討を行い、とりわけ90年代半ばの食料消費の変容に着目して、その背景にある要因としてネオポストモダン消費の胎動を指摘した。このネオポストモダン消費仮説は、食の安全・信頼、原産地、生産履歴、景観保全、生態サービス、地域支援、人権などへの消費者の関心の高さを説明することが期待される。この仮説を基本にした食料消費に関する意識と行動についての分析枠組みの検討を行うために、東京大学生態調和農学機構周辺の西東京市住民を対象にワークショップ型の意見交換会を実施した。近い将来に同機構内で実験直売所の設置を計画しているが、そこで食の安全や日本農業をテーマに、どのような研究・教育・社会活動を行うべきかについて議論を行った。またあわせて、同機構周辺の市民を対象に食の安全問題をテーマにしたコンジョイント型のアンケートによる意識調査を実施した。日本国内の生協を中心にした産直活動、英仏の地産地消活動、CSA活動、生協活動、生産者直売、そしてマルシェについて現地調査を行った。その結果、日英仏の先進国において、生産者と消費者との間の信頼の醸成とコミュニケーションのあり方が、これからのフードシステムの大きな課題であることが明らかになった。その結果を踏まえて、英仏出張時に海外研究協力者とネオポストモダン消費仮説の有効性、オルタナティブフードシステムの検討の意義について議論を行い、今後の研究枠組みとしての妥当性を確認した。
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季刊ビオフィリア
巻: Vol.7、No.4 ページ: 2-8
フードシステム研究
巻: 18 ページ: 221-226