研究課題/領域番号 |
23658181
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川島 博之 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30161318)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | インド / 農工間格差 / 農地転用 / 土地価格 / 所得格差 |
研究概要 |
人口の多いアジア諸国が経済発展を始めると、人口が都市部に集中し始める。それにと伴い、都市周辺で宅地、商業地の開発が行われる。その際、近郊の農地が転用され、それに伴い農地価格が急騰する。これは、戦後、日本で広く観察された現象だが、同様のことがインドで生じているかを確かめる。これが本研究の目的である。 インドの首都ニューデリー郊外の土地価格について調査し、それを地理情報システムに表記した。ニューデリー郊外の衛星都市グルガオン周辺の土地価格を調査した。土地価格は駅周辺だけでなく、かなり広い範囲で急上昇している。その平均価格は日本の半分程度と推定されるが、一部では日本よりも高いように思われた。グルガオンでは、新たな鉄道の建設が予定されている地域でも、既に値上がりが始まっている。インドの一人当たりGDPは日本の1/10以下である。その土地の価格は異常ともいえる。 インドには自作農のほかに、大土地所有者と小作人がいる。土地の売却費用が入ることになると大土地所有者は大金持ちになる可能性が高い。それはいまでも大きいインドの格差を、より一層大きなものにさせる。 グルガオン郊外の農地では小麦畑にスプリンクラーで散水していた。これは従来のインドでは考えられない光景であろう。この事実からも、インド農民の所得構造は急速に変化しつつあることがわかる。 土地価格を地理情報システムに落とし込んで空間分布を見ると、新興の新たな衛星都市での土地価格が高騰しているのに対して、これまでも都市だった場所の価格はそれほどでもない。これには、インドの格差社会が影響しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドでは不動産についての物件情報が新聞に掲載されている。そこには場所、広さ、価格などが明記されているため、多くのデータを収集することができた。また、実際に現地を訪ねることもできた。 この研究を始める当初は、インドにも不動産屋があると考え、そこを訪ねれば、価格だけでなく、より生々しい情報を得られるのではと考えていたが、それはこれまでのところ果たせていない。 また、土地化価格を地理情報システムで表現することはできたが、それと共にNSS(国勢調査)の結果を整理して、その情報と結びつけた解析を行うまでにはまっていない。
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今後の研究の推進方策 |
現地訪問を繰り返し、土地を売った農民にインタビューを試みる。そにより農地の売却についてより詳細な情報を入手する。また、NSSデータを読み解くことから、所有している土地面積の分布などについて、より詳細な解析を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
インド訪問の旅費に使うとともに、NSSデータを解析するために、データの整理、パソコンへの入力を行うためのアルバイト費用、また、これまでは小さなデジタルカメラで現地の写真を撮っていいたが、写真を書籍などで公表するためにより高給なデジタルカメラを購入したい。
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