NSS(サンプル調査によるインドンの国勢調査)のデータを用いて、インド農村部と都市部の所得格差について検討し、インドにおいても農村部と都市部で大きな所得格差が存在することを明らかにした。 所得格差が存在するために、インドでは農村から都市部への人口移動が生じている。NSSから都市部から農村部へ移動している人数を知ることはできない。このため、州の下の行政レベルである県に着目し、数理モデルを作成して、農村部から都市部へ移動した人口を推定した。その結果、ニューデリー、ハイデラバード、バンガロールへの人口集中が生じていることを明らかにした。その結果、人口増加が続いているインドでも農村部では人口が減少し始めていることを明らかにした。 人口の都市への集中は、都市の環境問題を深刻化させるとともに、都市部の地価の高騰を引き起こしている。都市が膨張するために、日本も経験したことであるが、周辺の農地が住宅地として転用され始めている。その転用価格を知るためにネット上に見られる販売価格を集計して地図上にプロットするとともに、現地調査を行った。インドの都市周辺の農地価格は高騰している。その平均価格は、日本の約半分程度になっている。これはインドの一人当たりGDPが、日本の1/20程度に留まっていることを考えると、極めて高い水準である。 インドは土地改革が中途半端にしか行われていない中で、地価が高騰する時代を迎えた。その結果、都市近郊に比較的広い農地を有する農家が土地売却益によって地方の有力者になる現象が見られる。一方、僅かな土地しか持たない貧農が安い価格で農地を奪い取られたことに対する抗議運動も頻発している。 インドにおける農工間格差は、都市部への人口の集中と、それに伴い土地が高騰する現象により、土地を利用して豊かになれる農民と貧しいままの農民、インドの農村社会をも2分している。
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