研究課題/領域番号 |
23658188
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
石川 雅也 山形大学, 農学部, 准教授 (30313068)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 水質汚濁 / 水環境 / 温暖化影響 |
研究概要 |
食料の安定供給農地や水質環境保全農地としてだけではなく、温室効果ガス放出抑制農地としての閉鎖型汎用化水田の利用可能性を探るため、その基礎的知見の蓄積を目的とした土壌カラムによる室内実験と野外埋設型ライシメータ試験を行った。今年度は硝化作用や従属栄養型脱窒作用等の発生源別N2O発生量を具体的に数値化するとともに、投入窒素量に対する溶存N2Oガスの残存量割合を明確にした。最終的に温室効果ガス放出量の大幅な削減に成功した。 野外試験結果では、投入窒素量606kg・N・ha-1に対し、地下水層帯での溶存N2Oガス気泡残存量は0.06kg・N・ha-1であり、溶存N2O量は無視できるほど小さい値であることが実測された。また、N2O放出量については、従属栄養型脱窒菌由来が硝化由来の約2倍であることが具体的な数値で明確となった。しかしその数値は投入窒素量に対して0.4~0.6%という、低い値であることが認められた。土壌カラム実験では脱窒量の算出について、既往の研究成果を踏まえ、算出方法の開発を試みた。その新しい方式を用いて、野外試験を行った転換畑区の年間窒素収支を算出した。と同時に、土壌水分量と水温、脱窒強度との因果関係を発見し、活性窒素除去能力を最大限に引き出すための圃場内水利量の経時変動予測式の導出に成功した。 温室効果ガス排出量について一般畑との比較検証を行った結果、N2O直接排出率とN2O間接排出率の合計値が転換畑区は1.6%であり、一般畑区(3.5%)の半分以下となった。さらに、閉鎖型汎用化水田での転換畑利用における年間N2Oガス放出量の合計量はわが国の基準値を大きく下回ることを具体的な数値で明らかにした。したがって閉鎖型汎用化水田構造を有した転換畑地では肥料成分を由来とする温室効果ガスの放出量を削減でき、一般的な畑地と比べて2倍以上の削減効果が期待できることが明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度に計画していた難関な課題を現在までに解決することができた。具体的には、土壌水分量と脱窒強度との因果関係を見つけることによって、活性窒素除去能力を最大限に引き出すための圃場内水利量の経時変動予測式を導出できた。
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今後の研究の推進方策 |
各種試験から得られた結果に対する総合的な解析と検討を行い、温室効果ガス排出低減と水質保全の持続可能性を目指した土壌水分環境条件を明示する。節水を考慮した持続的かつ効率的な圃場内水土管理方法の提案を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
野外試験の各種分析およびデータ解析、学会での講演旅費として使用する。
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